研究課題/領域番号 |
25370819
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館 |
研究代表者 |
野尻 忠 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 研究員 (10372179)
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研究分担者 |
斎木 涼子 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 研究員 (90530634)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大般若経 / 慈光寺 / 安倍小水麻呂 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度に引き続き慈光寺(埼玉県)所蔵『大般若波羅蜜多経』の全巻調査を実施したほか、採録した調書を電子データ化し、巻次不明巻の巻次を特定し、さらに寺外所在の僚巻の所蔵機関確認作業に着手した。また、慈光寺本以外の平安時代書写の『大般若波羅蜜多経』として、海住山寺(京都府)と長弓寺(奈良県)のものを調査した。そして、以上の調査成果を反映した展覧会を開催するべく準備を進めた。 慈光寺所蔵『大般若波羅蜜多経』については、全152巻のうち142巻の調書作成と写真撮影を終了し(残り10巻は保管場所が異なるため、27年度に現地調査を実施予定)、出揃ったデータの入力作業を実施した。入力作業の過程で追加調査の必要が生じた分については、順次これを実施している。142巻のなかには巻頭と巻末を欠失するため巻次が不明であるものが多かったが、研究協力者の補助を得てこれらの特定を完了した。また、もとは慈光寺に伝来しながら現在は他機関が所蔵する僚巻について、その所蔵機関と巻次を洗い出す作業を開始した。所蔵機関は全国に拡がっているため、すべてを網羅するには困難が予想されるが、最終年度までに可能な範囲で情報収集し、公的機関の所蔵分については写真収集または現地での現品調査を実施する計画である。 慈光寺本(9世紀)以外の平安時代書写の『大般若波羅蜜多経』として、26年度は海住山寺所蔵596帖の10帖(11世紀)を調査し、また長弓寺所蔵595帖のうち10帖(12世紀)を調査した。慈光寺本よりも時代がくだるものであり、それを反映して料紙の多様化、書き手の多層化が確認できた。 そして、以上の調査成果を、奈良国立博物館で平成27年4月7日~5月17日に開催する特別展「まぼろしの久能寺経に出会う 平安古経展」において公開するため、調査データや撮影写真の整理を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に挙げていた、慈光寺所蔵『大般若波羅蜜多経』(安倍小水麻呂願経)の調書データの入力、調書を再チェックするための追加調査、不明巻次の特定、僚巻所在確認作業への着手などが実施できた。一方、慈光寺本以外の『大般若波羅蜜多経』では、当初計画に挙げていた9・10世紀の遺品調査は今年度実施できなかったが、それとは別に研究推進に必要不可欠な11世紀・12世紀の遺品を調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
慈光寺所蔵『大般若波羅蜜多経』(安倍小水麻呂願経)について、一通り入力の完了したデータを基に、形態的特徴に関する研究を進める。あわせて、本品との比較研究に必要な他の『大般若波羅蜜多経』の調査を実施する。 27年度が研究期間の最終年度にあたるため、以上の調査データを整理、精査した一覧表、ならびに写真図版、研究論文等を収載した報告書を刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査出張が、諸事情でキャンセルになったため
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に実施できなかった調査出張を実施する
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