研究実績の概要 |
本年度の研究実績の概要は以下の通りである。アナトリア南東部での現地調査については、2015年夏期以降延期しているが、治安状況の改善がまったく期待できないため、今年度も断念した。現地調査にかえて、研究課題に関する研究文献を入手可能なものに限りイスタンブルの書店を通じて収集した。また2013年4月以降、アナトリア南東部を含むクルディスタン(現在のトルコ・イラク・イラン・シリアに跨がり、クルド人口が多い地域)理解のための必須の古典的名著であるMartin van Bruinessen, Agha, Shaikh and State: The Social and Political Structures of Kurdistan, London and New Jersey: Zed Books, 1992(マルティン・ファン・ブライネセン著『アーガー・シャイフ・国家 : クルディスタンの社会・政治構造』)の翻訳を複数の研究者と進めているが、その成果を『聖心女子大学論叢』127号と128号で発表した(山口昭彦・齋藤久美子・武田歩・能勢美紀による共訳)。2016年11月には東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の「近世イスラーム国家と周辺世界」研究会で「動くサンジャク(県)ー16-17世紀アナトリア南東部の移動する人間集団を対象とした地方行政組織」と題する研究発表を行った。2017年3月にはアレヴィー/ベクタシー研究会に参加し、アナトリア南東部の宗教的少数派がオスマン朝末期からトルコ共和国初期にかけて「トルコ人」として統合される過程について宗教学的観点から分析した近刊の研究書を紹介・批評した。
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