本研究課題では、19世紀後半の洋務運動期におけるマンチュリア(満洲、のちの中国東北部)で清朝が実施した政治・財政・軍事などの諸改革とその意図などを検討しつつ、その歴史的意義に関する再検討を試み、そのうえで、清代マンチュリアにおける歴史的変動とその特徴・意義についての新たな視点を構築することを目標に研究を進めてきた。 昨年度には学外に所蔵されている未公刊史料の調査を完了できなかったため、最終年度となる本年度にはまず、未完了となっていたその調査を行なった。その結果、マンチュリアにおける政治・財政・軍事各面での諸改革に関する史料データの抽出と整理は概ね終了することができた。次に、それぞれの諸改革の背景や内容などを比較し、諸改革間の関連性などについての検討を進め、さらに、その検討内容を前提に、当該時期の諸改革全体が有する特徴などに関する考察を試みた。現時点では、それらの検討・考察内容を踏まえ、清朝とその諸改革からみた19世紀後半のマンチュリアにおける歴史的変動の特徴の一端を明らかにしつつある。 ただ、上記の作業に加え、その諸改革を遂行した官僚らの動向・経歴や行動、さらには、彼らと洋務運動との関わりなどについての調査・検討を併せて行なったところ、その内容を本研究課題に関する研究成果の一部として含めておく必要が生じたため、本研究課題におけるこれまでの研究内容を最終的な成果として公表するまでには至っていない。その刊行に向けた作業を急ぎ進めている状況である。
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