研究課題/領域番号 |
25370832
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大澤 孝 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (20263345)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 古代クルグズ族 / イェニセイ河 / タガール時代 / テュルク・ルーン文字碑文 / ハカス共和国 / トゥヴァ共和国 / 岩絵銘文 / 資料収集 |
研究概要 |
本年度は7月2日~7日までロシア連邦ハカス共和国の首都アバカンにあるハカス言語・文学・歴史研究所を訪れ,同研究所のYuri, Esin氏とアバカン近郊の古代クルグズ時代のテュルク・ルーン文字銘文および岩絵資料を調査した.まず,アバカンから南西にあるアスキス地区の野外博物館で青銅器時代に建造された方形墓石の周囲に立てられた板石上にタガール時代の動物や人像に加えて,中世初期のクルグズ時代に刻まれたタムガや古代テュルク・ルーン文字銘文断片を撮影しつつ調査した.またアバカン市から北東に位置するイェニセイ河右岸の山岳の東面に刻まれたオクネフ期,タガール時代,タシュトゥク期から古代クルグズ時代の岩絵を調査した. また,7月8~10までは北ハカスのスレク岩絵に隣接する岩山の壁面に残されたタガール時代から古代クルグズ時代の岩絵銘文やタムガについて調査を実施した.その銘文にはこれまで解読できていない文字が使用されていることから,ルーン文字銘文の内容を分析することはむつかしい.また他の銘文も極めて短く,また難解な内容で,今後,更なる調査と分析を要する. 次に7月11~13日までは,ロシア連邦トゥヴァ共和国キジル市を訪れ,トゥヴァ人文学研究所主催の国際古代テュルク・ルーン文字碑文シンポジウムに参加し,口頭発表を行った.またその際には,キジル歴史博物館では当館に所蔵された古代クルグズ族の碑文を見学し,写真撮影した.またその後,西トゥヴァにあるチャホル河から西方のサンチ-村の古代クルグズ銘文を3点,訪れて撮影した.これらは既に,ロシア人研究者のコルムシンによって調査解読されたもので,その読みが正しいことを再確認することができた. またモンゴル国でも,7月18~8月18日,9月20~26日にはウランバートルの歴史研究所や考古学研究所の付属図書館で,課題の研究テーマに関わる資料収集を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで,ハカス共和国ではハカス共和国の言語・文学・歴史研究所の研究員と調査を実施して,断片的ではあるが,フィールド調査によって,これまで未発見の銘文についても調査を実施することができた. しかしながら,現地の考古・歴史博物館にある碑文を除けば,その多くは,現在も草原の立石や岩山にあり,その場所に行くには土地勘が必要である上,時間的にも不十分である.またトゥヴァ共和国での調査も,予想以上に時間や経費を必要とする.特に,調査を予定していたビチクト・カヤなどは現在,岩の崩落が進んでいるとの情報もあり,現在は,訪れることができないでいる. またモンゴル国の西北地方の碑文についても,既にモンゴル人及びロシア人研究者による調査報告内容を踏まえて,今後行うべき調査地や銘文内容を予備的に整理しつつある.今後,さらに既報告の銘文について再解読を行いつつ,歴史学的分析を進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては,引き続き,ハカス共和国の言語・文学・歴史研究所の研究員とイェニセイ河中流の岩山に残された岩絵銘文について共同調査を実施して行く予定である.特に,テプセイ岩山やスンドゥク岩山に刻まれた銘文類を中心に調査を実施してゆきたい.また,できればトゥヴァ共和国における岩絵銘文についても機会が許せば,現地の研究者と共同調査を進めてゆきたい.また,モンゴル国西北部における銘文や碑文についても,現在,与えられた時間の中で,調査すべき碑文を選定し,現地研究者と共同調査を進めてゆきたいと考えている.
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は当初,予定していた調査研究に必要な物品を,他から借用してまかなえたために購入しなかった.人権費その他についても,たまたま他の経費からまかなえたために,使用しなかった. 今年度には,当初の予定で購入を計画していた物品の購入にあてると共に,今年度,実施する予定の現地調査での人権費や消耗品その他に使用する予定である.
|