研究課題
本研究では、中央ユーラシア史の一大事件となる840年のモンゴリアにおける東ウイグル可汗国の崩壊の要因となったクルグズ可汗国の実態とそれに関わるモンゴリア方面への征服と南下移動について、現地資料の新たな調査と関係遺物について、現地の教導機関・研究者と共同調査を実施し、今後の研究のための基盤資料を構築することに努めた。これまで、クルグズ可汗国に関するイェニセイ銘文や考古遺跡などの現地語資料はロシア人や現地の研究者が独自に調査しつつ,公表されてきたが、それらの碑文や銘文は石自体が風化や落書きにより、崩壊に瀕しており、従来の読みと解釈にはなお疑問の余地がある。今回の調査ではそうした中でもアクセスが難しいイェ二セイ河流域のテプセイ山の岩肌地域に分布する岩絵や銘文を中心に現地研究者と共同調査を実施し,いくつかの新たな銘文の所在を明らかにすることができた。私はこの3年間の調査で、アスキス地区のタガール時代の立石を再利用して刻まれた古代クルグズ時代のタムガや岩絵,銘文に加え、特に今回はテプセイ山中腹の気候変動に伴う水位上昇に伴う河岸の崩壊のため、その存在すら困難となった川岸に彫られた岩絵や銘文の調査を実施した。それらの中には新たに発見したルーン文字群もあるが,なお文字自体が新種に属して、解読困難なものも含まれている。ただその一部の銘文には,クルグズ族の山岳信仰に関わる字句を含む銘文も確認しており、当時の信仰文化に関する基礎資料となるものと確信している。また本研究のメインテーマであるクルグズ族のモンゴル高原への南進を裏付ける銘文の実地調査にたった解読作業を進めつつあり,その解読成果は、西暦9~10世紀前後のクルグズ族の南方進出を検証する際の基礎資料となることは疑いない。なおこれらの成果の一部についてはこれまでも国際学会や研究会等で報告していることを付言させていただきたい。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件)
史朋
巻: 48 ページ: 1,34
アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明叢書12 「岩絵文化と人類文明の形成ーアフリカ,北欧,中央アジア,新疆,モンゴル」
巻: 12 ページ: 115, 175
I. Nevskaya, M. Erdal (eds.) Interpreting the Turkic Runiform Sources and the Position of the Altai Corpus
巻: 1 ページ: 131, 149