研究課題/領域番号 |
25370834
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊藤 正彦 熊本大学, 文学部, 准教授 (50253711)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 徽州 / 里甲制体制 / 社会的流動性 / 階層構成 / 賦役関係文書 / 魚鱗図冊 / 丈量 / 地理的分布 |
研究概要 |
中国・安徽省博物館所蔵の4点の賦役関係文書史料――①『万暦9年清丈帰戸親供冊』,②『万暦27都5図黄冊底籍』,③『万暦至崇禎27都5図3甲朱学源戸冊底』,④『清初27都5図3甲編審冊匯編』の記載内容を再確認するとともに,中国・上海図書館において関連史料の調査・閲覧を行ない,上記4点の文書史料を作製した朱学源戸にかかわる族譜,さらに休寧県27都5図で万暦9年の丈量の際に作製された魚鱗図冊=『休寧県27都5図丈量保簿』を閲覧・複写することができた。これらによって本研究を進める基盤を整え,『万暦9年清丈帰戸親供冊』と『休寧県27都5図丈量保簿』を活用して27都5図所属人戸の所有事産(田・地・山・塘)の地理的分布状況,27都5図内の所有事産の分布状況の分析に着手した。 中国で開催された国際学会(明清契約文書与歴史研究国際学術研討会 2013年11月22-24日)に参加し,本研究の前提認識である休寧県27都5図の階層構成の中国史上全体における意味づけを報告するとともに,研究協力者である欒成顕氏(中国社会科学院歴史研究所)・卞利氏(安徽大学徽学研究中心)と研究打ち合わせを行ない,さらに他の徽州文書研究者たちとも交流を行なった(南京大学の范金民氏,復旦大学の王振忠氏,曁南大学の黄忠鑫氏など)。上述した上海図書館での『休寧県27都5図丈量保簿』の閲覧は,交流を通して得られた情報によるところが大きい。 なお,本研究の前提認識である休寧県27都5図の階層構成を論じた論文「明代里甲制体制下の階層構成―徽州府休寧県里仁東郷二七都五図の事例―」の中国語訳の作成も行ない,研究成果の国際的共有化を進めた(安徽大学徽学研究中心『徽学』第8巻,2014年に掲載予定)。また,上述した国際学会での報告論文の中国語訳も公刊が決まっている(『宋史研究論叢』14,河北大学出版社,2014年掲載予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上海図書館で『休寧県27都5図丈量保簿』(万暦9年の丈量の際に休寧県27都5図で作製された魚鱗図冊)を閲覧・複写できたことによって,当初予定していた以上の精度で27都5図所属人戸の所有事産(田・地・山・塘)の地理的分布状況,27都5図内の所有事産の分布状況を分析することが可能となった。さらに『休寧県27都5図丈量保簿』=魚鱗図冊を活用することによって,27都5図内の佃戸の存在状況や経営状況を分析することも可能となった。 関係史料を再検討した結果,27都5図内の任官者・知識人について以前に示した認識(「明代里甲制体制下の階層構成―徽州府休寧県里仁東郷二七都五図の事例―」)を修正する必要があることが分かり,階層構成に関する認識の精度を高めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
『万暦9年清丈帰戸親供冊』と『休寧県27都5図丈量保簿』を活用して27都5図所属人戸の所有事産(田・地・山・塘)の地理的分布状況,27都5図内の所有事産の分布状況,27都5図内の佃戸の存在状況・経営状況の分析を進める。さらに事産交易の頻度・範囲・規模,通婚圏の分析にも着手する。 なお,ひきつづき国内外の関係史料の閲覧に努めるとともに,研究成果は学会報告等の形で発表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
多忙のために,研究代表者が予定していた国内での資料調査を行なえなかったためである。 次年度以降,国内での資料調査を行なって補うことにする。
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