研究課題
戦後日本の華僑社会の再編については、国民党および台湾政府の公文書類を精査し、とくに1950年代の華僑学校の争奪をめぐる国民党と台湾政府の僑務政策を明らかにすることができた。冷戦体制が定着するなかで、日本華僑に対しては統制と管理を強化する僑務政策が採られたが、それに応じる華僑社会の側でも、学校再建のために政府資源を利用するなどの対応が図られた。華僑による自律路線という視点からこの時期を分析すると違った光景が見えてくることを示唆した。国際比較の観点から分担者を中心に進められた北米華僑社会での調査は、冷戦時期に活躍した国民党僑務委員カナダ華商の李日如に焦点を絞り、比較分析が進んだ。彼は没するまで反共意識を持ち、ビクトリアや、サンフランシスコの僑務委員と連絡しつつ、北米西海岸を覆う政治回路の一角を形成するとともに、強まる国家のプレゼンスと協調することで社会上昇を実現した人物であった。最終年度の成果を世に問う目的で、分担者と協力して国際シンポジウム「戦後・冷戦期における東アジアの華僑社会」を開催した。海外3カ国からの研究者を含めた、総勢9名からなる報告会を構成し、朝鮮半島の華僑、在日台湾人、北京政府と台湾政府両者の華僑政策、米国の対華僑政策を視野に入れた議論を展開した。参加者全体で冷戦期華僑社会の国際比較研究の有意性を確認するとともに、今後の研究方向を探る意味を込め、インドネシアとフィリピンの華僑研究者を交えて4名のコメンテーターに加わってもらい、知見を共有した。当日は80名ほどの聴衆が集まり、社会へのアウトプット効果は少なくなかったと考える。
神戸華僑歴史博物館春節祭特別展2016「神戸華僑の戦後70年―神戸中華同文学校の行事写真を中心に」(2016年1月28日~4月9日)パネル展示総責任者(写真・資料約500点余り、パネル10点を企画展示)。そのうちの三点①あの頃の同文(1)駐日代表団/中華民国大使館管轄下の華僑社会、②あの頃の同文(2)1950年代冷戦下華僑学校をめぐる国共両党の対応、③あの頃の同文(3)校舎再建運動、を作成した。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 8件、 招待講演 8件) 図書 (2件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
村上衛編『近現代中国における社会経済制度の再編』京都大学人文科学研究所
巻: なし ページ: (未定)
陳來幸、北波道子、岡野翔太編『交錯する台湾認識――国家と文化のはざま(仮題)』勉誠出版(アジア遊学シリーズ)
宋伍強編『近現代日韓広東華僑社会組織研究』広東人民出版社
Takako Yamada & Toko Fujimoto (eds.), Migration and the Remaking of Ethnic/ Micro-Regional Connectedness, Osaka: Senri Ethnological Studies
巻: 93 ページ: (未定)
宋承錫・李正煕編『東南アジア華僑と東北アジア華僑の比較研究 』学古館
巻: なし ページ: 353-387
日華実業
巻: 第六十三号 ページ: 34-36
江柏イ、王秋桂主編『歴史島嶼的未来―2015金門歴史、文化與生態国際学術研討会論文集』金門国家公園管理処
巻: なし ページ: 389-404
呉宏明・高橋晋一編『南京町と神戸華僑』松籟社
巻: なし ページ: 205-212、213-220
呉宏明、高橋晋一編著『南京町と神戸華僑』松籟社
巻: なし ページ: 255-266
http://www.geocities.jp/kakyokajin/info.html
http://www.kochm.org/index.html