研究課題/領域番号 |
25370838
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
大城 道則 駒澤大学, 文学部, 教授 (00365529)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 古代エジプト / 西洋史 / 考古学 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、古代エジプト史のなかでも周辺地域からの異民族流入が著しかった第三中間期に注目し、当時の文化浸透のメカニズムを明らかにすることにある。そのため、エジプト国内よりも周辺世界で存在が知られていたバクエンレンエフ王(ギリシア名ボッコリス)の動向を手掛かりに、その前後の時期も同時に検討し、当時のナイル世界の社会状況の把握と理解を目指している。 本年度(平成27年度)の研究代表者による紙媒体としての研究成果は、第三中間期を包含する紀元前1千年紀の異文化流入について論じた「上エジプトの都市アクミムの重要性―紀元前1千年紀の異文化流入と黄道十二宮―」(『関西大学西洋史論叢』第18号、45-62頁)および『古代エジプト死者からの声―ナイルに培われたその死生観―』(河出書房新社)の一部がある。 本研究課題の目的達成のために研究協力を依頼しているエジプト探査学会(Egypt Exploration Society)のクリス・ノウントン(Chris Naunton)博士を英国から招へいし、2015年9月23日の13:00時~17:00時に、2015年度駒澤大学古代エジプト研究会年次大会(Komazawa University Ancient Egyptian Society Annual Meeting 2015)を開催した。大会当日は、ノウントン博士による「第25王朝初頭における政権交代と改造」(“Regime Change and Reshuffling at the Beginning of the Twenty-fifth Dynasty”)以外にも、山下真里亜氏による「クシュ系」第25王朝における王権と統治体制―戴冠の旅とラー=ホルアクティ礼拝堂から―」(“Kingship and Political System during 25th Dynasty: Coronation Journey and Ra-Harakhte Chapel”)と研究代表者による「オソルコン三世の墓はどこにあるのか?」(“Searching for the Tomb of Theban King Osorkon III”)の二本の研究発表がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心に位置付けている第24王朝のエジプト王バクエンレンエフが、第三中間期およびそれ以降の時期において果たした役割についての理解を深めるために、第24王朝とほぼ同時期に存在した第23王朝と第25王朝に関する研究発表を2015年度駒澤大学古代エジプト研究会年次大会において三人の研究者により実施した。当該時期の文化的複雑さを確認・理解することが十分できる良い機会となった。また紀元前1千年紀にみられるギリシア・ローマ世界からの文化的影響についての論考を出版し、エジプトへの異文化流入の実態の把握を行った。 次年度以降の研究協力(招へい講演)についても、第三中間期を専門とする複数の海外研究者から了承を得ている。予定していたフランスのルーヴル美術館での資料収集がテロの影響で中止した点を除けば、おおむね研究は計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度となる。英国のダラム大学のペネロペ・ウィルソン(Penelope Wilson)博士の来日と未発表原稿に基づいた講演を予定している。その際に、2016年度駒澤大学古代エジプト研究会年次大会(Komazawa University Ancient Egyptian Society Annual Meeting 2016)を開催する。本研究課題を進めていく過程で実施した研究発表・講演を基とした原稿を集めて、数年のうちに英文での研究書を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料収集(エジプトのサッカラにあるセラペウム出土の複数の石碑)のために、ルーヴル美術館を訪問する予定であったが、テロの影響により中止となった。このことから渡航費用が使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度実施できなかったルーヴル美術館を訪問する予定であるが、状況によってはルーヴル美術館からデータを購入する費用に充てるか、エジプトへの渡航費として使用する予定である。
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