研究課題/領域番号 |
25370839
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
私市 正年 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (80177807)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナショナリズム / アルジェリア / ザーウィヤ / Setif事件 |
研究実績の概要 |
1.2015年8月末から9月初めまで本研究の資料分析において協力を得ているFoued Kacimi氏を日本に招聘し集中的な資料(al-Ruh)の読解と分析を進めた。アルジェリア・ナショナリズム運動が、宗教文化運動から政治運動に変わっていく上で決定的に重要であったのが1945年のSetif事件であるが、このSetif事件の情報が他の新聞や雑誌ではほとんど報道されていないことがわかり、あらためてal-Ruh紙の重要性が明らかになった。それと同時にザーウィヤの青年たちがいかにして情報を得ていたのか、調査する必要があることがわかった。 2.2015年12月末から2016年1月初めまで、および2016年3月にアルジェリアのBou Saadaを訪れ、Foued Kacimi氏の協力を受けつつ資料の読解と分析を行い、すべての読解作業を終えた。あわせて注を付ける作業を開始した。アルジェではZoubir Arous氏とRaouf kacimi氏と会い、本資料の内容とアルジェリア・ナショナリズム運動について意見交換を行った。 3.本資料はこれまで全く知られていない、植民地期アルジェリアにおける民衆レベル(青年たち)の思考や行動に関する重要資料である。そのことを踏まえつつ、アルジェリアでの出版を計画し、Foued kacimi氏の協力を得つつその具体的な準備を始めた。現在のところDar al-Khalilより出版を予定している。また2016年度(平成28年度)、アルジェ大学あるいはGlycinesにおいて講演を行う予定で先方の担当者と準備をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のような作業と分析を終え、予定通りの成果が得られたのでおおむね研究は順調である。 作業としては、本研究の基本資料であるal-Ruh紙の読解をほぼ終えた。残る作業はテキストの入力作業と注をつける作業であるが、これもFoued Kacimiと電子メールで連絡をとりつつ作業を進めている。本資料の分析から、従来のFLNおよびアルジェリア・ウラマー協会を中心としたナショナリズム運動とは異なる、草の根の活動の中から革命的なナショナリズム運動が育っていたことが明らかになった。しかも、彼らは10代後半から20代半ばの青年たちであること、ザーウィヤという民衆イスラーム的施設の青年たちであること、またザーウィヤのあるal-Hamilが、都市ではなく、首都アルジェから250km南のサハラ砂漠の入り口に位置する地方の村であることは、ナショナリズム運動の生成発展を考える上で重要な点であろう。 青年たちがパレスティナ問題に強い関心を抱いていたことも、当時(1948年)のアラブ世界の情報がどのように広がっていたかを考える上で興味深い。さらにこの問題から、アルジェリア独立戦争が、パレスティナ問題を通じてアラブ意識とイスラーム意識を強め、イデオロギー的な強化がなされたことが明らかになった。また本資料の重要性にかんがみ出版の準備も進めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は研究の最終年度にあたるので研究をまとめる作業を行う。
1. 7月(予定)にDar al-Khalil館長のFoued Kacimi氏を招聘し、al-Ruh紙の読解と分析を進めつつ、パソコンに入力したテキストの確認作業を行う。2. 9月(予定)にBou Saadaを訪問し、al-Ruh紙の内容の解説と史料的意義についてまとめる作業を行う。あわせて注をつける作業を進める。3. アルジェリアでの出版方法と時期について具体的なめどをつける。4. 本資料の意義に関する講演をアルジェ大学またはGlycinesで粉う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1. アルジェリアへの出張期間が当初予定よりも短くなり、その分、次年度への繰越額が増えた。 2. 平成28年度は研究の最終年度にあたっており、al-Ruh紙のテキストを研究成果報告書として印刷・刊行する予定であり、その分の予算をあらかじめ確保する必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
1. Foued Kacimiを平成28年7月に招聘する予定であり、その招聘費用として使用する。 2. al-Ruh紙のテキストを研究成果報告書として印刷・刊行する予定であり、その費用として使用する。
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