1.2015年8月末から9月初めまで本研究の資料分析において協力を得たFoued kacimi氏を日本に招聘し集中的に資料(al-Ruh紙)の読解と分析を行った。2015年12月末から2016年1月初め、および2016年3月、同様の作業をアルジェリアのBou Saadaにおいて行った。この作業により、アルジェリア・ナショナリズム運動が、宗教文化運動から政治運動に変わっていく上で決定的に重要であったのが1945年の「5月8日事件」であったが、ザーウィヤの青年たちもこの事件からきわめて大きな影響を受け、この事件以後、文化宗教運動から行動主義へと変わっていったことを、al-Ruhの資料分析によって明らかにした。 2.アルジェリア・ナショナリズム運動は、従来の研究では、世俗的ナショナリズム組織であるFLNと改革派ウラマー協会の二つを軸にして研究され、ザーウィヤなど民衆的イスラーム組織は否定的、ないしは植民地支配に協力的であった、と説明されてきた。しかし、本資料によって明らかにされた事実は、ザーウィヤの青年たちがFLNよりも先に、行動主義的主張をし、独立運動を担うイデオロギーを構築したことである。この事実は、従来のナショナリズム運動と独立運動の研究に根本的な修正を求めるものである。 3.本資料の重要性に鑑み、テキスト全文と資料解題をつけてal-Ruh-Journal des jeunes Kacimiという書名で2017年出版(アルジェリア、Dar al-Khalil出版)をした。あわせて、2018年2月、マスカラ大学、トレムセン大学で本資料の紹介とナショナリズム運動の再考について、講演(招待)を行った。また、同2月、アルジェリア・国営第一テレビ(アラビア語)に出演し、本資料の重要性と出版の意義について話をした。
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