研究実績の概要 |
本研究は、オスマン帝国末期の官営汽船会社の人事記録に関する文書やオスマン帝国公文書を分析することにより、(1)イスラーム社会における社会保障のあり方としての年金制度の実態、(2)オスマン帝国末期の人々のくらし、人生を明らかにしようと試みるものである。この目的を達成するために、トルコ共和国首相府オスマン文書館所蔵のオスマン帝国期の公文書およびトルコ海運公社資料室所蔵の「個人記録文書」等の史料群を取り上げ、それぞれについて詳細なデータ・ベースを構築し、分析する作業を行っている。 本年度も昨年度に引き続き、オスマン帝国における公的年金制度の実態を明らかにするため、関連史料の収集に重点を置いた。現地調査では、まず首相府オスマン朝文書館において、昨年度作成した勅令、閣議文書、ユルドゥズ文書、国政会議文書の中の年金に関係する史料のリストにもとづき、史料の収集を継続した。その結果、2年間で、勅令91点、閣議文書76点、ユルドゥズ文書64点、国政会議文書177点の史料を収集することができた。また、トルコ海運公社資料室においては、「個人記録文書」から、特に情報量の多い人物のファイルを抽出し、重点的に調査を行った。その結果、No.438, 440, 442, 458, 462, 466, 515, 520, 530, 535, 663, 719の計12人分のファイルの内容を確認し、必要な書類については、手書きもしくはデジタルカメラによる撮影を行うことにより詳細なデータを得ることができた。アタテュルク図書館、バヤジット国立図書館では19世紀末から20世紀初頭のオスマン語新聞の年金関係記事の収集を行った。 これらの一次史料に加えて年金福祉関係の文献の収集を行った。
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