研究課題/領域番号 |
25370843
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
太田 修 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (00351304)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日記 / 日常 / 仁川 / 労働者 / 解放直後 / 朝鮮戦争前夜 |
研究概要 |
2013年4月には、1945年から1947年までのI日記を分析した研究成果「解放直後のある労働者の日常生活-仁川の電気工I氏の日記から-」(『日記を通してみた伝統と近代、植民地と国家』所収)(朝鮮語)を公刊した。また、それを修正、加筆した日本語版「朝鮮解放直後におけるある労働者の日常-仁川の電気工I氏の日記から」(『日記が語る近代-韓国・日本・ドイツの共同研究』所収)を公刊した。これらの研究では、I氏が解放直後に朝鮮に進駐してきた米軍を歓迎し、「八・一五解放記念日」など政治イベントに参加して、解放を喜び、独立を願ったこと、職場での同盟罷業に参加したこと、インフレと食糧・物資不足の中で美国(アメリカ)映画や美国商品など有形無形の美国の文物を受容していたこと、伝統的な生活様式、仏教・民間信仰を重視していたこと、などを明らかにした。植民地支配と戦時体制から解放された一庶民の平和な日常が浮かび上がった。しかしそうした平和もつかの間のことで、日常はふたたび戦争へ突き進んでいった。その過程を描くことが次の課題である。 また2014年3月7日に、高麗大学校民族文化研究院との共同研究「冷戦研究の最前線」で、「朝鮮戦争前夜のある労働者の日常-仁川電気工I氏の日記から」(朝鮮語)というテーマで中間報告を行なった。この報告では、1948年から1949年7月までのI日記を整理、分析した。大韓民国樹立前後から朝鮮戦争前夜にかけて、I氏が南北国家の樹立により分断が固定化されていく国際・国内政治の状況を日記に記していたこと、職場で警察による「共産主義者捜し」の査察が行なわれ、軍事訓練への動員が行なわれていたこと、解放直後と同様に生活難が続いていたこと、韓国政府の陰暦廃止政策に対してI氏は批判的だったこと、I氏は、将来、商人実業家になることを夢見ていたこと、など朝鮮戦争前夜の庶民の日常を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書の「研究実施計画」に記した予定では、平成25(2013)年度中に、1950年6月までのI日記について報告することになっていたが、実際には、1949年7月までしか報告できなかった。I日記の翻刻作業とその整理・分析に予想以上の時間がかかったためである。日記の翻刻、整理・分析作業が1年分遅れているが、他のI日記に関連する基本文献調査・収集作業(仁川関連資料、京城電気株式会社関連資料)、仁川のフィールド調査、遺族へのインタビューなどの作業は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には交付申請書の「研究実施計画」に記した予定にそって作業を進めていく。 ただしI日記の翻刻作業、整理・分析作業が1年分遅れており、その遅れを取り戻すために補充的な作業を行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本国内、および韓国(ソウル・仁川)での資料調査を1度しか実施できなかったこと、またI氏の日記の翻刻作業が予定通り進まなかったことにより、時年度使用額が生じた。 昨年度実施できなかった日本国内、および韓国(ソウル・仁川)での資料調査を実施し、I氏の日記の翻刻作業の遅れを取り戻し予定通り進める費用として使用する。
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