平成26(2014)年度に引き続き、I日記の整理、データ化作業(①スキャンしてPDF化する、②手書きの文章を朝鮮語の原文どおりに起こしてデータ化する、③重要な部分を日本語に翻訳する)を行なった。平成28(2016)年度は、①については、1956年までの日記をPDF化することができた。②については、1949年1月から1951年12月分までの翻刻分について原文通り正確に翻刻できているかどうかチェックした。本年度も、大学院生を雇用して作業を行なった。③については、1949年度と1950年度分を正確に翻訳できているかどうか再確認した。 2016年9月には、I氏の生活圏であった地域(現在の仁川広域市東区ソンヒョン洞)のフィールド調査を行ない、ご遺族にインタビューした。I日記にしばしば登場する東邦劇場、文化館、華人の集住地域などを踏査した。1950年のI日記には、朝鮮戦争当時に人民軍が駐屯していたことや米軍による爆撃があったことが記されているが、その地理的情報を得ることができた。 2017年1月28日には朝鮮史研究会関西部会1月例会(於河合塾大阪校セルスタ3階会議室1)で報告「朝鮮戦争前夜のある労働者の生活-仁川電気工I氏の日記から」を行い、2016年3月にの国際シンポジウム「日記からみた東アジアの脱植民地化と冷戦」での報告をまとめて、論文「朝鮮戦争下のある労働者の生活-二つの社会、恐怖、平和への焦がれ」(板垣竜太・鄭昞旭編『同志社コリア研究叢書3 日記からみた東アジアの冷戦』同志社コリア研究センター、2017年3月、https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/24735/r005000030006.pdf)を公刊した。
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