研究課題/領域番号 |
25370849
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
深澤 安博 茨城大学, 人文学部, 教授 (60136893)
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研究分担者 |
中田 潤 茨城大学, 人文学部, 教授 (40332548)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フランコ政権 / モロッコ保護領 / 西北アフリカ帝国構想 / ドイツ第三帝国 / タンジャ占領 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究は、第1に、第2次世界大戦中のスペイン・フランコ政権のアフリカ植民地政策とくにモロッコ保護領統治政策を明らかにすること、第2に以上の植民地政策・統治政策に対して「原住民」がどのような反応を見せたのか、とくにモロッコ民族主義者の動向はどうか、第3にドイツ第三帝国のフランス占領後のスペイン軍によるタンジャ占領またヘンダーヤでのフランコ・ヒトラー会談におけるフランコ政権の意図は何だったのか、以上のことの解明を目的とした。 当該年度の研究によって以下のことが明らかとなった。①ドイツ第三帝国がヨーロッパで軍事的に優勢だった1941年前半頃までは、フランコ政権は北部モロッコだけでなく南部モロッコやアルジェリア西部も占領して「スペイン西北アフリカ帝国構想」を実現しようとの意図を持っていた。1940年6月のタンジャ占領はこのような意図のもとに遂行された。フランコ・ヒトラー会談でフランコ政権はこの意図を述べたが、ドイツ側はこれにかならずしも同意しなかった。この中でとくにモロッコ保護領では「原住民」に対する宥和政策が採られた。モロッコ民族主義者の一部にはフランスによる統治よりもスペインによる統治を期待する動きも見られた。②しかし、ドイツが次第にヨーロッパで不利な状況となった1942~1943年になると、連合国側の働きかけもあって民族主義者の多くはスペイン統治に反発を見せるようになった。民族主義者たちはこの頃から都市部だけでなく部族地域も含めたモロッコ保護領の多くの地ではっきりとモロッコ民族主義の旗を掲げるようになった。スペイン植民地当局は民族主義者の動向を監視し、民族主義の分裂を図る方策を採った。 以上の研究は、スペイン陸軍資料館、スペイン総合公文書館、スペイン国立図書館旧アフリカ資料室の各所蔵資料の閲覧によって可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究目的」で設定された3課題、つまり、①第2次世界大戦中のフランコ政権のアフリカ植民地政策、②とくにモロッコ保護領での「原住民」政策、③フランコ政権の「西北アフリカ帝国」構想について、とくに②についてスペイン陸軍資料館、スペイン総合公文書館、スペイン国立図書館旧アフリカ資料室の各所蔵資料の閲覧によって多くのことを明らかにできた。スペイン総合公文書館にはこの期のモロッコ民族主義者の動向についてスペイン植民地当局がいろいろな手段で集めた多くの報告が所蔵されており、これらの文書によって民族主義者の動きについて多くのことを知ることができた。民族主義者たちはこの頃からフランス領の民族主義者とも連絡をとるようになった。スペイン植民地当局は民族主義の分裂を図る方策を採った。
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今後の研究の推進方策 |
今後はとくに以下のことを重点的に研究する。①とくにモロッコ民族主義者たちの要求内容の検討、それに対する部族地域での「原住民」の反応、②モロッコ民族主義者たちは連合国・連合軍とどのような関係を持っていたか、ドイツが次第にヨーロッパで不利な状況となった1942~1943年以降に連合国・連合軍はフランコ政権に対してどのような姿勢で臨むようになったか、③連合国・連合軍の北アフリカ政策に対するフランコ政権の反応。以上のことを、スペイン総合公文書館とスペイン国立図書館旧アフリカ資料室の各所蔵資料を集中的に閲覧して明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した英語文献の書籍が2014年度中に届かず、購入できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に発注した英語文献の書籍が2015年度中に届く予定なので、これらを購入する。
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