研究課題/領域番号 |
25370850
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西川 杉子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80324888)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宗派ネットワーク / ユグノー / デプレツェン / 改革派 / カンタベリ大主教 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、その前年度に得られた1760年代のモルドヴァ公国のプロテスタント共同体支援の情報に基に、5月16日から26日までと9月6日から14日まで、ブリテン・カンタベリ大主教関連の書簡資料を二回にわたり調査し、1760年代におけるブリテンと大陸プロテスタントのネットワークの全体像の把握に努めた。そしてハンガリーのナジエニャドとデプレツェン、そしてドイツのザールブリュッケンがほぼ同時に、大主教に使節を送り、さまざまな情報提供を行っていたことを発見した。11月20日から12月1日にかけては、これらの発見を裏付けるために、デブレツェンに滞在し、現地の研究者と情報交換を行う一方、デプレツエン改革派神学大学の文書館の調査を行い、この1760年代にブリテンとの交流について、ハンガリー側の記録を調査した。その結果、18世紀前半と比較すると小規模になったが、ユグノーのネットワークを利用して、イングランドの大陸プロテスタント支援のネットワークが継続(あるいは復活)していたことを確認できた。またこのネットワークの機能を明らかにするうえで、これまでは考察対象としていなかった7年戦争の宗教的側面およびハプスブルク家(カトリック)との外交関係の影響を検討する必要が明らかになった。これは、18世紀半ばの宗派ネットワークの調査をすすめることによって、啓蒙の世紀のブリテンの外交・政治のあり方に宗教がどのように影響を及ぼしていたのか、具体的に解明する手がかりになると思う。これらの発見は、ハンガリーの研究者およびイギリスの研究者にも関心を持たれ、平成27年度にそれぞれハンガリーおよびイギリスにおいて、研究発表するよう招待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、科研を用いて、イギリス、ウクライナ、ハンガリーで調査を行い、18世紀半ばのトランスナショナルなネットワークの存在を確認し、現地の研究者にも評価されている。平成27年度には中間報告もかねて、ハンガリーとイギリスの学会でそれぞれ発表することにもなった。しかし、これまでのいずれの調査も限られた時間に、日本からは到着するまでに時間のかかる場所で行わなくてはならず、十分に時間をかけたとは言い難い。まだ調査しなくてはならない文書館が残されている。特に、イギリス・ハンガリー・モルドヴァ公国(現ウクライナ)のネットワークに関しては、ポーランドのクラクフとワルシャワおよびドイツのエアフルト、さらにザールブリュッケンでも調査を行う必要があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ハンガリーおよびイギリスにおいて、研究の中間報告を兼ねた学会発表を行う。また、時間が許す範囲で、イギリス、ポーランド、ドイツの文書館で調査を行い、1760年代の宗派ネットワークの全容を明らかにしたい。
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