研究実績の概要 |
今回の科研で確認できたことは、イングランドの場合は、18世紀半ばまでは機能していたキリスト教知識普及協会などの国家をこえた宗教ネットワークの関係団体が、世紀半ばには大陸への関心を失う一方で、18世紀後半にはユグノーのネットワークがカンタベリ大主教に働きかけながら、大陸のプロテスタントとの連絡を保ち、小規模ながら大陸のプロテスタントに対する救援活動を行っていた事実である。宗教は依然として大義として新聞や小冊子でとりあげられているが、海外の宗教同胞との結びつきは、ユグノーなど親族関係に収斂していたといえよう。また、平成28年1月6日から12日にかけてと5月28日から6月5日にかけて、それぞれロンドン・イングランド銀行とブロツワフ(ポーランド)公文書館および大学図書館で私費で調査を行い、このプロテスタント・コロニーについての資金移動と当時の宣伝文書を発見することができた。これらはいずれもユグノーが関係しており、ユグノー・ネットワークの強固さを確認することができた。 今年度は、二度、私費で史料収集の他は、上記の議論をまとめて、主に海外の英語圏で発表することに費やした。18世紀の国家を超えた宗教ネットワークの変容に関する研究は、欧米でも専門家の間で注目を集め、3本の論文'Ending a Religious Cold War' , 'English Relief Activities for Continental Protestants in the Eighteenth Century' , "‘When in Rome…’’が、それぞれ、平成29年1月から6月の間に刊行される三冊の論文集に収録される他、平成28年9月29日から10月3日まではケンブリッジ大学(英国)ガートン学寮で開催された宗派ネットワークに関する国際会議で招待報告を行った。
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