この科研ではトランスナショナルなネットワークが衰退したとされる18世紀後半において、小規模ながらもヨーロッパ・プロテスタントとの連携運動に着目し、イギリス、イタリア、ウクライナ、ハンガリー、ポーランドで資料調査を行った。その結果、亡命ユグノーのネットワークが、その連携運動を担い、密な連絡を保っていたことが明らかになった。特に調査対象としたJ. J. マジェンディらユグノーの子孫たちは、イングランド国教会を信奉しており、国教会の内部で、大陸のプロテスタント救済のために働きかけを行っていた。彼らの言説は、17世紀と変わらない宗教の大義を掲げたものであったが、それに呼応する人々も多かったのである。
|