研究課題/領域番号 |
25370853
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
徳橋 曜 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30242473)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヴェネツィア / 環境 / 近世 / イタリア |
研究概要 |
25年度は研究計画の初年度であるので、まずこれまでの事前調査で得られた史料の情報・また収集してきた未刊行史料・刊行史料の内容の精査を進めた。すでに分析を進めていた史料について得られた成果の一部は、25年度中に執筆した論文「中世の西欧における災害の記録と意識」(印刷中)に反映されている。ただし、当初の計画では25年度の研究に関して、ポー川とアディジェ川に関する分析に力点を置いて、16世紀~18世紀のヴェネツィア政府の河川管理政策の変遷とその時々の政策決定過程について、委員会決議や報告書に見られる環境意識・公共意識を抽出していくことを目指していた。そこで特に力点をヴェネツィアとそれを取り巻くラグーナ環境よりも、本土の環境に置くことを意識していたのであるが、入手済みの史料の内容を分析し、文書館の所蔵史料情報を確認するなかで、内陸都市の河川管理を改めて確認し、方向性を考える必要を感じた。そこで比較対象として、すでにこれまでに研究分析の対象としているトスカーナ地方の内陸都市フィレンツェについて、Salvestrini等の研究を参照しながら、領域国家としてのフィレンツェのアルノ川管理の方向性を検討し、またフィレンツェ文書館で関連史料の調査を行った。そうしたなかで14世紀の著名なローマ法学者サッソフェラートのバルトルスが、テーヴェレ川を対象として法治体制の観点から河川流域のさまざまな問題を論じている(Tractatus de fluminibus seu Tyberiadis, 1355)ことも判り、1576年にボローニャで出版されたその刊本(1964年復刻)の分析も進め、こうしたローマ法学の観点が15世紀以降の領域国家の河川政策に影響した可能性を検討しつつある。こうした25年度の検討の結果を生かして、26年度は集中的にヴェネツィアで史料調査を行うものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中で研究推進の方法について見直しをしたため、当初計画とは異なり、フィレンツェ国立文書館での史料調査を行う一方、ヴェネツィアの文書館での調査は行わず、その点でやや遅れている。しかし、見直したことで計画としてはより着実なものとなり、また比較のためにフィレンツェ文書館での調査を先に行ったため、26年度からの研究には有益な結果も得られ、大きな遅れではないと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は研究方法と方向性の確認と見直しで得られた結果を反映して、あらためてヴェネツィア国立文書館で調査を行い、そこで得られた史料の分析から河川管理の政策と意識の変化を追究すると共に、国立文書館でのSavi ed Esecutori alle Acqueの調査を終了する。またポー川とアディジェ川に加えて、ブレンタ川について史料の調査・検討を行う。さらに年度中にパドヴァ国立文書館でも関連史料の所在と内容を調査する。2週間ほどの調査滞在を10月から2月の間に頻繁に行い、その都度、結果をフィードバックしながら、史料調査を集中的にかつ着実に進めていく。27年度以降もその方針に従いながら、研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では25年度の研究に関して、ポー川とアディジェ川に関する分析に力点を置いて、委員会決議や報告書に見られる環境意識・公共意識を抽出していくことを目指し、特に力点を本土の環境に置くことを意識していた計画を進めた。しかし、入手済みの史料の内容を分析し、文書館の所蔵史料情報を確認するなかで、内陸都市の河川管理を改めて確認し、方向性を考える必要を感じたので、無駄な現地調査を行わないために史料調査の方向性の見直しを行った。そのため、海外出張旅費の利用が少なくなった。ただし、比較分析のために、トスカーナ地方の内陸都市フィレンツェのアルノ川管理の方向性を検討し、フィレンツェ文書館で関連史料の調査を行ったため、そのための旅費は使用している。以上の理由から次年度使用額が生じた。 25年度の研究方法と方向性の確認と見直し、および入手済みの史料の精査で得られた結果を研究に反映させながら、あらためてヴェネツィア国立文書館で調査を行う。さらに年度中にパドヴァ国立文書館でも関連史料の所在と内容を調査する。次年度使用額として留保した金額は、次年度支払い申請分と合わせて現地調査費用とする。26年度については、研究の遂行を考えて大学の業務に支障のないように配慮をしたので、2週間ほどの調査滞在を10月から2月の間に頻繁に行い、その都度、結果をフィードバックしながら、史料調査を集中的にかつ着実に進める。頻繁に渡航するため、往復の航空運賃が繰り返し必要となり、26年度の使用金額の大半はこれに充てることになる。
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