研究課題/領域番号 |
25370853
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
徳橋 曜 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30242473)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境意識 / ヴェネツィア / 水 / 森林 / 河川管理 / 近世 |
研究実績の概要 |
26年度は前年度の観点を生かしつつ、計4回、現地に赴いて史料調査を行った。ただし、前年度の展望ではパドヴァ国立文書館でも調査を行う予定であったが、ヴェネツィアの史料に重要な情報が見いだせたため、今年度はそのままヴェネツィア国立文書館で調査をすることに計画を変更した。観点としてはラグーナの水環境およびこれに連動する河川管理についての意識や施策の実態を探るべく、Savi ed Esectori alle Acque(SEA)、Giudici di Piovegoのシリーズを中心に15世紀から18世紀の史料を調査・撮影した。17世紀のポー川流域の状況に関する報告書集成(SEA208)、16、17世紀のブレンタ川の流路変更や治水に関する決議や報告書(SEA92, SEA577)をはじめとする河川管理関連史料、大運河の浚渫やラグーナおよび運河の管理に関する規定や記録からは、水環境をめぐるヴェネツィア当局の意識や施策の方向が具体的に判る可能性が改めて見えてきた。まだすべての分析が終わってはいないが、「公権力」として環境を管理しようとするヴェネツィア政府や水利委員会の意思は、明確に読み取れる。これと並んで、水環境管理とも関連して本土の森林に対する強い関心を当局が示していたことから、森林に関わる3つの史料群Provveditori sopra legne e boschi, Provveditori sopra boschi, Amministrazione Forestale Venetaの史料を調査し、他の史料からはラグーナの水環境や河川洪水と森林管理を関連づけていることが判明するものの、主要な関心はやはり森林資源の保全にあることを確認した。この成果の一部は、2015年に刊行予定の水島司編『環境と歴史学』(勉誠出版)所収の拙稿に反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、研究推進の方法について見直しを行ったが、これに従いながら、ほぼ計画通りの史料調査ができた。パドヴァでの史料調査は行わなかったが、これは、本年度は集中的にヴェネツィアで調査を行ったほうが有益であると判断したためであり、収集した史料の詳細な分析は完了していないものの、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は26年度に収集した史料の分析を続けつつ、引き続きヴェネツィア国立文書館で史料調査を行って、河川管理の政策と意識の変化を追究すると共に。森林管理政策の検討も行う。また、パドヴァ国立文書館で関連史料の所在と内容を調査し、その結果をヴェネツィアでの史料調査で得られた結果と照らし合わせながら、ヴェネツィア側とパドヴァ側の意識を比較していく。調査については、1~2週間ほどの現地滞在を10月から2月の間に数回行い、その都度、結果をフィードバックしながら、史料調査を着実に進める。28年度以降もその方針に従いながら、研究を推進しつつ、本土側での史料調査をさらに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたヴェネツィア・パドヴァでの史料調査のうち、1回分を校務のために実施できず、また同じく校務のために他の調査の期間を延長することもできなかったため、約15万円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度支払請求分と合わせ、ヴェネツィアでの史料調査の旅費に使用する。
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