研究実績の概要 |
28年度は前年度のパドヴァ国立文書館での史料状況の調査を踏まえて、同文書館で史料を収集し、特にFondo Acqueのシリーズのうち、Sentenze per cause di acque e confine tra Verona, Vicenza e Padova (1411-1447)、Atti diversi relative al canal della Battaglie, Bacchiglione e altri corsi d’acqua (1628-1653)、Processo della citta' e del territorio di Padova contro il magistrasto di beni inculti (1559-1629)などを集中的に調査した。そこから河川をめぐるヴェローナ、ヴィチェンツァ、パドヴァの紛争にヴェネツィアが関与・介入していること、パドヴァ領域の河川の流域の紛争に関しては、ヴェネツィア当局ではなくパドヴァの当局が処理していたことが確認でき、その実態の一端を調査できた。 また、ヴェネツィア国立文書館においてSavi ed Esecutori delle Acqueシリーズの史料調査・収集も継続した。特にScritture circa la Laguna, e fiumi Po, Adige, Reno, ed altri (1561-1579)に収められているアルヴィーゼ・コルナーロの提言書や論考の検討からは、当時のヴェネツィアの知識人の意識・関心についての情報を得ることができ、一方、Itinerari, relazioni, visite ecc. dei nobilissimi Esecurtori e periti circa Lidi, Brenta, Bacchiglione, Muson, Adige, Gorzon e Po (1548-1614)に収められている帳簿を分析し、河川管理の在り方を経費から検討することができた。現在、水利委員会が編纂した規定集(capitolari)のうち、1415~1607年の分を分析中である。 これらの調査・分析の成果の一部は、メトロポリタン史学会大会シンポジウムでのコメント、『歴史と地理』での環境関係の史料紹介に反映させた。なお一昨年度から準備中であった水島司編『環境に挑む歴史学』が刊行され、提出後の成果を反映させて修正した論考が掲載された。
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