研究課題/領域番号 |
25370853
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
徳橋 曜 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30242473)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヴェネツィア / 水 / 河川 / 水利監督 / 紛争 / テッラフェルマ |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度までに収集し、解読を進めつつあった史料のさらなる分析と検討を進めた。本年度までの国立ヴェネツィア文書館と国立パドヴァ文書館での資料検索により、ヴェネツィアの森林管理関係の史料8種類、ラグーナと市内の運河・道路等の管理を行うピオヴェゴ判事関係史料3種類、本土の河川管理に関わる水利管理局のものを中心として、水利に関連した史料30種類、パドヴァ側に残された水利関係史料4種類を収集してきた。これらの史料については各年度に分析を進めつつ、内容の検討と再考察を行ってきたが、それを踏まえつつ、昨年度のパドヴァ文書館での調査で発見・入手した、ヴェローナ、ヴィチェンツァ、パドヴァの間で15世紀前半に生じたと思われる「紛争」vertenzaへのヴェネツィアの関与についての記録(Fondo Acque 30)について、その具体的な内容の解読と分析をさらに進めた。ただし、本年度は確認作業のためのイタリア出張が実施できなかったため、この記録を補完するような他の史料を検討することはできなかった。また、水利管理局の規定集Capitolariの解読と分析と並行して、同管理局が作成した大評議会・元老院・十人評議会の決議録抜粋の検討も進めた。この抜粋については1530年代までの史料を収集してあるが、ここから同管理局が職掌と認識していた事柄を検討した。これは当局が水利に関わる政策をどのように捉えていたかということにも関わってくる。結果としては運河の管理やゴミの処理なども含まれるものの、時代を追って河川の管理に関する内容が増えていく傾向が見えてきたが、これを裏付けるにはできれば17世紀までの同シリーズの決議録抜粋を見ておきたいと考えている。なお、当初計画では本年度が最終年度であったが、進捗状況に鑑み、30年度まで延長した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は役職による公務の多忙化により、本来であれば行うイタリアでの補足・確認のための史料調査が行えず、また既に入手している史料の分析をもっぱら行なっていたものの、その分析作業自体にも遅延が生じ、さらに、パドヴァとヴェローナ、ヴィチェンツァをめぐる紛争の情報や、それに対するヴェネツィアの関与に関わる史料の調査など、分析に伴って必要となった新たな検証作業をイタリアで実施できなかった。そのため、進捗に遅れが生じざるを得ず、「やや遅れている」という判断となった。なお、当初の計画では29年度が最終年度であったが、上記の理由から30年度まで延長した。
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今後の研究の推進方策 |
本来は29年度を最終年度としていた本研究の終了を、公務の多忙による研究活動の遅れから、30年度に延長した。そこで、30年度にはイタリアへの出張も含めて、最終年度としての作業を行えるように計画を進めている。具体的にはヴェネツィアとパドヴァの文書館に対象を絞って、最終的な史料の確認を行うが、可能であれば、国立ヴェローナ文書館にも赴き、15世紀前半のパドヴァとの河川をめぐる紛争についての記録の有無を確認する。そのような作業を終えた後に、水利をめぐるヴェネツィアの政策の特徴について、史料から得た情報を元にしながら考察し、本研究のまとめとすると共に、成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
役職に伴う公務の多忙化により、本年度は計画していたイタリアでの史料の確認作業ができず、出張旅費が未使用のままとなった。これに伴い、研究の進捗自体もやや遅れているため、29年度を最終年度としていた当初計画を変更し、30年度まで延長した。そのために次年度使用額が生じたものである。30年度はこれを使用して、研究をまとめる作業の一環としてイタリアでの史料の確認を行う。出張は2度に分けて行う予定であり、これによって次年度使用額は殆ど使用することになる。残余は消耗品やイタリア語論文の発表準備などに利用する。
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