最終年度であった本年度は、解読を進めつつあった史料のさらなる分析と検討を進めた。本年度は、昨年度までの国立ヴェネツィア文書館と国立パドヴァ文書館での資料検索により収集した、ヴェネツィアの森林管理関係の史料8種類、ラグーナと市内の運河・道路等の管理を行うピオヴェゴ判事関係史料3種類、本土の河川管理に関わる 水利管理局のものを中心として、水利に関連した史料30種類、パドヴァ側に残された水利関係史料4種類を分析してきた。そして、これを補強するものとして、新たにパドヴァ及びヴェネツィアでの史料確認を行い、特にパドヴァでは、パドヴァ当局の河川・運河管理に関する"Acque"シリーズの151から155、161、164、178、179、182の史料を調査し、必要な部分の撮影を行なってきた。これによって、パドヴァ当局とその支配都市であるヴェネツィア政府との水利及び河川管理に関わる交渉の様子の一端を見いだすことができた。一方、ヴェネツィアの文書館では水利管理委員会の文書を所蔵する"Savi ed esecutori alle Acque (SEA)"のシリーズのうち、78、344、529を主に調査をし、技術的な観点を含めてヴェネツィア側の委員会や技術者達の認識を探った。これは、当局が水利に関わる政策をどのように捉えていたかという、昨年度からの分析の延長である。結果として、当面、河川の管理をめぐって、本土の都市当局は目前の問題への対処や財政負担に関する問題がもっぱらの関心と交渉事項であるのに対して、ヴェネツィア側は、特に技術者達自身の提案を含めて、より踏み込んだ河川管理を早くから意識していることが読み取れた。 ただし、その成果を本年度中に発表することはできず、2019年度に整理・発表していく予定である。
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