研究課題/領域番号 |
25370857
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (70337757)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チャリティ / イギリス / 国際人道支援 / エグランタイン・ジェブ / 両大戦間期 / セーブ・ザ・チルドレン / 国際赤十字社 |
研究実績の概要 |
前年度に遂行した国際NGOセーブ・ザ・チルドレンの創設過程に関する研究成果に立脚し、28年度には、1919年に創設された後、同団体の生みの親であるエグランタイン・ジェブがどのような人々とともに、どのような課題に取り組んでいたのかを検討した。その際、国際連盟や国際赤十字社との関連を念頭に置いて、トランスナショナルな文脈の中で考察することにつとめた。なお、トランスナショナルという視角に関しては、本年度の初めには辻善之助の仏教史と博愛に即して学会報告し、本年度末には、この視角の理論的な可能性を別の学会で紹介した。 本年度の研究活動の中で特筆すべきは、夏に訪問したバーミンガム大学のCadbury Research Libraryにて、そこに一括所蔵されているPapers of Eglantyne Jebbという史料の調査を行ったことである。ここには、戦争が終わって間もない疲弊したヨーロッパ各地からの子どもの窮状を伝える諸報告のみならず、エグランタインが初期のセーブ・ザ・チルドレンを軌道に乗せるために国際赤十字の重要人物と接触し、こちらの陣営に協力をしてくれるよう説得する手紙や、寄付金を効果的に集めるための広報戦術に関する覚書や、集めた寄付金の配分原則についての方針草案など、興味深い現場の事情が多く含まれていた。 本年度の残りの時期は、こうして収集した新史料の整理と分析に充てられた。当初本年度には国際赤十字社を中心に据えて国際人道支援とチャリティの関係に迫ろうと考えていたが、期せずして、セーブ・ザ・チルドレンを介して、側面から赤十字社の役割に光を当てることができ、かつ、セーブ・ザ・チルドレンの歴史的な性格規定における赤十字の占める位置を測定することができたのは、大きな収穫だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」で記した通り、間接的にではあるが、たしかに国際赤十字社をはじめ、セーブ・ザ・チルドレンなどの国際NGOの、第一次世界大戦後の時期における子ども救済活動と、これを十全に行うための組織内部でのさまざまな試行錯誤のありさまを、これまでの研究ではあまり使われた形跡のない史料から読みだすことができた。以上の理由から、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、次年度は過去4年の研究の総括を行いたい。19世紀半ばから20世紀初頭の、イギリスでのチャリティ活動に淵源する「国際人道支援」の生成と展開を、総合的に把握する視座を得ることを目指す。また、比較史的な観点から、同時期の日本における西洋的チャリティの導入をめぐる対応を、辻善之助の仏教史研究の内容とからめて、本年度以上に、詳しく検討してみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
順当に支出していったが、当該残額については、次年度に合わせて用いた方が効果的に研究が遂行できるとの予測が立ったので。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の助成金の一部と当該残額をあわせて必要な洋書等の購入や旅費に充てることとし、その他についても、当初の計画通りに使用していく。
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