研究課題
本年度も引き続き、16~18世紀のリヨンで帰化した外国人の帰化状の解読を進めた。ローヌ県文書館のBP 1881-1883を調査すると、この期間にリヨンで帰化した計256人の外国人の特徴を再構成することができた。帰化状の文言は、「神の恩寵により」とする前文から始まり、申請者の氏名、出身地、宗派、両親の氏名、職業、肩書きなどが記され、続けて移住の経緯、帰化の動機、移住後の職業などが列記された後、居住・永住の意思表明がなされる。最後に、帰化に伴う国王と外国人の契約内容が明記されると同時に、外国人遺産没収権から免除されるように請願される。帰化に要した費用については、パリを調査したサーリンズは300~600リーヴルであったとしているが、リヨンの史料からは国璽料と登録費あわせて数10リーヴルで可能であった事例も複数存在する。パリへの移動費と国王書記官や仲介者への仲介料などを加味しても、少なくともリヨンにおいては、富裕者層でなければ取得できないというものではなかったと思われ、実際に帰化申請者の多様な社会的背景が浮かび上がってきた。私は昨年9月にオルレアン大学で行われた国際議会史学会で研究発表を行い、その内容をもとに投稿した論文が、本年3月に雑誌Parliaments, Estates and Representationに掲載された。また、来月『歴史の見方・考え方:大学で学ぶ「考える歴史」』(山川出版社)が刊行される予定であり、その第2章を執筆した。本年8月にはローマで国際都市史学会が開催されるが、そのセッション"Immigrants and refugees in Western European Cities"において本研究成果を報告することが決まっている。日本語での雑誌論文が出せなかったことが悔やまれるが、ローマ学会後に質疑応答を踏まえた上で原稿を仕上げ、投稿することにしたい。
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Parliaments, Estates and Representation
巻: vol. 38, n. 2 ページ: 1-14
10.1080/02606755.2018.1436261