本研究は大改革の核をなした農奴解放に焦点をあてた。ロシア連邦国立文書館所蔵の皇帝、コンスタンティン大公文書を中心的な資料として用い、次のような結論に至った。(1) 農奴解放は19世紀初頭以来積み重ねられてきた改革の延長線上にある。(2) クリミア戦争は国庫に経済的打撃を与え、経済改革や軍隊の改革を必然化したが、農奴制の廃止を迫る程のものではなかった。(3) 農奴解放の画期は1856年3月の皇帝演説、1857年1月の秘密委員会設置などいくつか考えられるが、実現された形での農奴解放は1858年夏頃にその実施が決定された。
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