本研究は、ワイマル期(1920年代~30年代初頭)のベルリンでの各政治勢力(ナチス・共産党・共和国擁護派など)による政治的暴力が「酒場」を拠点として繰り返されていた点に着目して、この時期のベルリンにおける政治的酒場の実態およびこの酒場を起点に展開された政治的暴力を一次史料に基づいて分析・検討し、ワイマル期ベルリンにおける酒場と政治の関係を社会史的な具体層でとらえていくことを目的とする。 2015(平成27)年度においては、これまで2年間の中で行った2回の渡独で収集した史料の分析とそれに基づいた論文の執筆を活動の柱とした。2015年度前半には、過去2年間の活動の中でまとめた1920年代から30年代初頭にかけてのベルリンにおける政治的暴力の概要とその際の酒場の役割に関する研究成果を踏まえて、こうした酒場と政治の関係の起源を明らかにするために、第二帝政期(第一次世界大戦前)まで遡って検討を行い、政治的酒場の成立に関する学術論文を執筆した。 2015年度後半からは、再び1920年代から30年代初頭のベルリンでの政治的暴力について個別具体的な事件のレベルでの分析を行ったが、その際には過去2年間で収集した膨大な資料の中から政治的酒場を舞台にしたものを特にピックアップして、その原因・経緯・結果を一つずつ明らかにしようと努めた。対象となる事件数が多数に及ぶため、史料の分析は現時点で継続中であるが、その分析の終了次第、できる限り早い段階で成果を論文としてまとめる予定である。
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