研究課題/領域番号 |
25370870
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
畠山 禎 北里大学, 一般教育部, 准教授 (60400438)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近代史 / ロシア / 教育社会史 / 職業技術教育 / 社会階層 / 進路 / 女子教育 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、①平成26年度研究課題「女子職業教育の展開プロセス」の考察と成果取りまとめ作業、②平成27年度研究課題「女子職業教育機関における生徒の社会構成」の史料調査を行った。 ①女子職業教育の拡張プロセスを「女子職業教育政策」、「教育団体、地方自治体、私人の教育運動」、「女子職業教育の目的と内容をめぐる教育活動家の議論」の3点から論じた。1860年代以降、政府は女子職業教育事業の行政機構を整備するとともに、補助金の分配などをつうじて学校運営への関与を高めていく。しかし、学校規定法の制定は実現せず、一連の教育政策をつうじた、女子職業教育の拡張における国家の役割は限定的であった。そうしたなか、教育団体、地方自治体、私人が学校・学級の創設や運営の主たる担い手となった。たとえば、ロシア技術協会は専門委員会を設置し、学校規約の試案を作成し、さらに学校の開校・運営に参画する。モスクワ市やサンクトペテルブルク市は市立初等学校卒業生の進学先を確保すべく、職業教育に取り組む。1889年以降、3度にわたってロシア技術・職業教育活動者大会が開催された。女子職業教育部会での報告と討論では、国内経済の発展や生計維持を目的に女子労働の推進を支持する者と、家庭における女性役割の重要性を理由に女性労働の拡大に慎重な者との間で議論が展開された。 ②ロシア国民図書館で史料の調査・収集を行った。学校史、記念集、年次活動報告書など、女子学校・学級の関連図書をできるだけ網羅的に確認し、生徒の社会構成――出身身分・階層(親の職業)、学歴、信教、年齢など――に関する情報を抽出した。総じて、学校・学級数や生徒数の増加にともない、下位身分・階層出身者の教育機会は拡大していった。その一方で、中間層を対象として想定した、専門的な職業技能を教授する学校や家政学校、職業学校教員養成学校などが出現し、生徒の構成も多様化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究の目的」の達成度を「やや遅れている」と評価した。その理由は以下のとおりである。 平成26年度課題「女子職業教育の展開プロセス」について、「女子職業教育政策」、「教育団体、地方自治体、私人の教育運動」、「女子職業教育の目的と内容をめぐる教育活動家の議論」の3点を詳細に検討し、それぞれを独立した論文として発表することにした。3点について並行して研究を進めた結果、今年度中に論文を発表できなかった。そのため、達成度を「やや遅れている」とした。平成28年度は引き続き、論文の完成をめざす。 ただし今年度、論文執筆過程で「女子職業教育政策」についてロシア国立歴史文書館(RGIA)にて追加調査を実施し、これまであまり研究されていない、1880~90年代の女子教育改革に関する史料を閲覧することができた。 平成27年度課題「女子職業教育機関における生徒の社会構成」については、ロシア国立図書館で文献の調査・収集を実施することができた。史料の詳細な分析ならびにその結果の取りまとめは、平成26年度課題の論文執筆が遅れているため、平成28年度の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、①平成26年度および27年度研究課題の成果取りまとめ作業と②平成28年度研究課題の史料調査・収集、史料の分析を並行して実施する。 平成26年度課題「女子職業教育の展開プロセス」の成果を3つの論文にまとめる。論文執筆が完了次第、平成27年度課題「女子職業教育機関における生徒の社会構成」の成果取りまとめ作業に移る。 平成28年度課題「女子職業教育機関卒業生の進路」について、平成29年2~3月に2~3週間の予定で、ロシア・サンクトペテルブルクでの文献調査を実施する。平成27年度課題の外国調査同様、まずはロシア国民図書館で学校史、記念集、年次報告書など個別学校・学級の刊行物をできるだけ網羅的に閲覧し、必要部分を収集する。時間的に余裕があれば、ロシア国立歴史文書館や国立中央歴史文書館(サンクトペテルブルク市)(TsGIA SPb)でも調査を行う。収集した史料を分析し、進路傾向とその変化を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も研究費の大部分を外国調査に使用した。前年度の使用実績をもとに旅費や宿泊費、複写費などを見積もった。その際、政情不安などによる物価、とくに複写費の値上げを考慮してやや多めに算定した。結果的にはルーブルの為替レートが下落したため、全額を使用しなかった。外国調査を年度末の2~3月に設定したこともあり、残額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
おもに、旅費(外国調査)や物品費(図書、コンピュータ周辺機器)として使用する。
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