研究課題/領域番号 |
25370872
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
高澤 紀恵 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (80187947)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パリ / 17世紀 / ジャンセニスム / 教区 / ミクロ・ポリティクス / 権力 / カトリック・改革 |
研究実績の概要 |
2014年8月末まで当該テーマに関する史料調査をパリで進めた。17世紀中葉パリのサン・ポール教区教区財産管理委員会関連の史料読解を国立公文書館で続ける一方、ポール・ロワイヤル文書館での調査を並行した。1633年から64年までサン・ポールの教区司祭であったニコラ・マジュールが早い時期から熱心なジャンセニストとなり、パリの宗教-政治の重要なアクターとなっていくからである。これらの調査から、両者の対抗に関する史料の収集をほぼ終え、抗争を概観することができた。ただし、サン・ポール教区に拠点をおくイエズス会とマジュールの抗争は、長期の、また幅広い文脈の中で分析する必要であるので、2014年度は同じく同教区にあるミニモ会との抗争の分析に集中した。その成果は、リール大学でのシンポジウムで発表した。2015年度中に論文とし、近い将来、出版されることになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画を作成する段階においては、司祭ニコラ・マジュールがジャンセニストになっていくことがわかっていなかった。史料調査を進めるなかでこの点があきらかになったため、ジャンセニスムに関する膨大な研究蓄積をあらためて渉猟する必要がでてきた。この事実は、サン・ポール教区のミクロ・ポリティクス研究の持つ意義を高めるものであるが、同時に当初の予定よりも研究の達成に時間がかかる結果を招いている。
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今後の研究の推進方策 |
1630年代、40年代の司祭マジュールとミニモ会の抗争を英文論文にまとめることが、2015年上半期の達成課題である。Factumsから析出した両者の抗争は、1640年代から加熱する対イエズス会抗争をより長期的に把握し、同時に教区生活のどのような現実の中から司祭がジャンセニスムに傾斜していくかの理解を助けてくれるものと思われる。 また、2016年5月にロベール・デシモン氏を招聘するため、2015年度下半期はそのための準備をすすめる。あらかじめ氏の報告原稿を翻訳することで、フランス史の専門家を越えて広く議論を開き、近世における宗教変容と権力の再編という本課題の理解を深めることを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の海外出張旅費精算が年度中に完了しなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の旅費として精算済みである。
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