最終年度にあたる2016年度は、パリ、サンポール教区のミクロな分析を進める一方、日仏の研究者との討議の機会を積極的につくり、研究の発信につとめた。具体的には、2016年5月に(当初の計画より数ヶ月遅れたが)フランスより近世パリ研究の泰斗ロベール・デシモン氏(Ecoles des Hautes Etudes en Sciences Sociales)を招聘し、京都大学(5月6日)において「あるフランス人歴史家の軌跡と知的交流」を、東京日仏会館(5月13日、14日)で国際研究集会「都市・家・身分」を開催した。延べ100名を超える日仏の研究者の間できわめて高度かつ濃密な学術的対話が実現した。その結果、研究計画の最終的目標「国内外の近世史研究者との討議を通して、新たなヨーロッパ社会・国家像を構築する」は大きく前進した。とりわけ日仏会館での国際研究集会においては、フランス史の林田伸一氏にくわええ、イギリス史の坂下史氏、日本史の吉田伸之氏がデシモン氏の報告にコメントをし、近世都市における統合の諸相について比較史的な検討を加えることができた。ここから、日仏の研究者の間で新たな共同研究プロジェクトの構想が生まれてきている。 2016年11月にはJapan ICU Foundationの助力も得てフランスからファニー・コッサンディ氏(EHESS)を招聘して研究集会を組織したのにつづき、2017年3月のフランス出張においてフランスの研究者との議論を深めるともにサンポール関連史料のチェックを行った。
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