研究課題/領域番号 |
25370878
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
前川 一郎 創価大学, 国際教養学部, 教授 (10401431)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イギリス / 開発援助 / 脱植民地化 / 新植民地主義 / 東アフリカ |
研究概要 |
本研究の目的は、旧植民地が独立後も植民地主義的従属関係を強いられたとみる世界史理解――新植民地主義的世界史像――は、近年の研究成果や、新たに公開された一次史料に照らして実証に耐えないとの認識に立ち、かつての帝国の中心・周縁関係が独立後にどのように変遷したのか、その実態を明らかにすることにある。具体的には、典型的なイギリス植民地として発展し、独立後も新植民地主義に侵食されたとされる東アフリカを取り上げる。旧宗主国イギリスの影響力は、実際には極めて限られており、独立期アフリカ諸国の自立性を阻むものではなかった。本研究は、虚心坦懐に史料を検証し、脱植民地化の基本的事実を解明するなかで、戦後世界の史的特質を考察する試みである。新植民地主義というグランドセオリーを前にして、これまで必ずしも実証的な「歴史化」を阻まれてきた脱植民地化過程のダイナミズムを再検討することが、本研究の主たる目的である。 研究計画調書に記した本年度の研究課題は、(1)研究全体にかかわる基礎研究の整理、(2)イギリス援助政策についての実証研究、の2点である。このうち前者については、本研究全体にかかわる研究動向について多角的に概観し、本研究を支える学術的基礎を強固にするため、継続的な作業が求められる。(2)の実証研究については、さらに①戦後イギリス援助政策の全体像とその具体的展開について、そして②イギリスの対東アフリカ援助(資金・技術)の内容とその具体的展開について、というように援助政策の全体像と東アフリカを事例とする具体的過程の検討を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究は、上記概要に記した二つの点に沿って遂行したが、両面にわたって予定以上の進展が見られた。まず(1)の基礎研究の整理については、長年探索して手に入れることのできなかった研究書William Rendell著The History of Commonwealth Development Corporationを手に入れることができた。本書の著者はGeneral Managerとして、1960年代のCDCをけん引した人物であり、本書は一次史料としての側面も有している。また(2)の実証研究の面においては、イギリスの国立公文書館(TNA)で資料調査も行い、脱植民地化の時代のイギリスの対アフリカ援助政策が、従来の資金援助事業から撤退して、技術援助と農業支援に傾斜する傾向が明らかになった。こうした研究をふまえて、下記に記すように、今後は、研究代表者がカバーしきれないトピックを扱い得る共同研究がより望ましいという考えに至った。
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今後の研究の推進方策 |
上記に記したとおり、研究代表者は本年度の研究を通して、本研究をより充実した内容にするためには、自身がカバーしきれないトピックを包摂する共同研究を模索する必要があるという考えに至った。脱植民地化の時代のイギリス援助の全体像と対東アフリカ援助の実態については、今年度の研究を通しておおむね考察することができたが、そこから浮かび上がってきた科学技術の問題、農業支援の内容、行政にかかわる技術援助の問題などは、これまで研究代表者が本格的に取り上げてこなかった問題であり、それぞれの専門家との意見交換が重要である、決定的な意味を持つと考える。そうした共同作業を通じて、研究代表者が描く全体の歴史像(歴史解釈)を再検証する必要性を感じている。そこで次年度は、こうした共同研究の準備となるような意見交換の場を設定し、更なる研究の充実に努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
書籍購入で予定していた額の未使用と、史料調査日程の短縮分による。 先に記したように、次年度は関連分野の研究者との意見交換や招聘して共同研究会を開催することなどを予定している。
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