本研究は部族固有の記憶を宿す地所の国定史跡化に力を注ぐノーザン・シャイアンの事例を検証することで、歴史と記憶の交差を検討するものである。現地フィールド調査、インタビュー調査、史資料調査を通して、1)歴史性に訴えて先住民が土地保全を図る方策には一定の有効性が認められる、2)部族の精神性、宗教性に関わる記憶は歴史という文脈に容易に収まらない、3)史跡化により部族の記憶は国史に一旦は従属させられるものの、史跡管理の過程において出来事の解釈を巡る議論・対話は継続する、ことが明らかとなった。史跡化は部族主権の原点に関わる記憶を継承し、時間的奥行きをもって近代部族自治を捉えることに繋がることが確認された。
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