古代ギリシア人は墓や彫像、碑文や歴史、弁論などを記憶の場として活用していた。ペルシア戦争の記憶はマラトンの塚や祭典、記念柱や碑文に残していた。その実例としてマラトンにある記念柱や塚、アゴラ博物館にある碑文、スパルタにあるレオニダス廟や「レオニダス像」に見たのである。ペロポネソス戦争後のスパルタ帝国の記憶をアゴラに残されていた「ラケダイモン人の墓」に見、それがアテナイという異国に建設され、アテナイが敵国人の墓を破壊せずに残した意味を検証した。さらに民主政復活後のアテナイがアテナイ帝国の遺産を継承し活用していく過程を各地民主派への顕彰碑文や弁論に繰り返される言説を見ることで確認したのである。
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