モスクワ、ペテルブルクの文書調査により、研究代表者はモスクワ最大の茶商人家系であるボトキン家の帳簿を発見し、1830年代から1850年代の茶の流通構造を具体的に知ることができた。他の茶商人に関する帳簿や事業記録はほとんど残っていないが、モスクワ市の課税・保険史料など間接的な分析材料が存在することも明らかにした。以上の調査から、ロシア帝国の茶貿易従事者にはロシア商人だけでなくドイツ系・ユダヤ系・タタール系商人などの民族的・宗派的多様性があること、貿易仲介業者の国際性が判明した。またキャフタ茶貿易委員会記録から工場主と茶貿易業者の利益が共通し、露清貿易における輸出入業者の共通利益も明らかとなった。
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