研究課題/領域番号 |
25370890
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
芝田 幸一郎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50571436)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アンデス / ペルー / 考古学 / 文明 / 神殿 / 壁画 / 権力 / 地域間関係 |
研究概要 |
ペルー国アンカシュ県海岸地方で、8年ぶりの継続調査を実施した。具体的には、形成期中期(1200-800BC)から後期前半(800-450BC)にかけて栄えたことが判明しているワカ・パルティーダ神殿遺跡の頂上南部を発掘し、またその周辺遺跡を踏査・測量した。主な目的は、ワカ・パルティーダ遺跡で壁面装飾(壁画・レリーフ等)を掘り出すことであり、また他遺跡との比較分析等によって、遠近様々な地域間での宗教的指導者の紐帯のあり方や、それが各地の社会へもたらした変化に迫ることである。 発掘の結果、今回は神殿最上段で2面の壁面装飾を掘り出すことに成功した。幅は5~8m、高さは現存部で1m弱だが、本来は3m近くに達していたと推測される。一つはワシなど猛禽類と思われる様式化された図像が、粘土をレリーフ状に盛り上げて表現されており、黒・白・赤・青の4色で彩られていた。もう一つは宙に浮いた人物の下半身で、足首から下が同時に怪物的な横顔にもなる図像であり、同じく4色で彩られていた。これまでに同遺跡で発見してきた複数の壁面装飾と組み合わせると、空・地上・地下(水面下)の三層に別れる世界が見えてきた。明瞭な形で形成期のコスモロジーが見いだせる稀有な事例である。一方で、断片的な形ではあるが、このような三層コスモロジーの類例は若干数の他神殿にもみられることが分かった。今後のワカ・パルティーダ継続発掘と各地での資料増加によって、形成期地域間関係への新しいアプローチ方法が開けるだろう。またワカ・パルティーダの事例では、空と地上の間にその仲介者と思しき特殊な人物像が挿入されていた。仮に当時の宗教的指導者だとするならば、今後この人物像の出現過程等を追い、他資料から得られる社会的・経済的変化の過程と見比べることで、形成期研究における重要課題の1つである権力の生成というテーマに取り組む好材料となる可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時における研究計画では、2013年度の主たる項目はワカ・パルティーダ遺跡の発掘調査を実施することであった。この点において代表者の計画は十分に実現された。また、フィールドワーク終了後、帰国までに出土遺物を整理し、一部資料は平成26年度に行なう各種分析のための搬送(ペルー国内各都市)まで終えている。 本研究計画の要である壁面装飾(壁画・レリーフ等)に関しては、3種の分析を計画していた。図像分析は順調に進み、想定以上の成果も得られた(各種メディア報道参照)。製作技法の分析はやや遅れているので2014年度の課題とする。壁画顔料や下地の組成分析に関しては、発掘調査中に、この分析の専門家に現場に来てもらい、サンプルを直接採取してもらうことが叶った。2014年度中には分析結果の報告を受ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度出土遺物の一部(自然遺物、壁画顔料サンプル等)は、2013年の発掘調査終了時に、分析を依頼する各種専門家の所属研究施設に搬入を済ませている。したがって2014年度はすみやかに分析を始めることができる。8月にペルーへ渡航し、各種調整を行なう。また代表者が出土遺物の一部(主に土器)に関して記録・分析する。これらの結果をとりまとめ、年内に学会・研究会等で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地監督官庁による公式の調査許可証発行が遅れたことに伴い、発掘調査の期間が短縮された。残業などによって期間内に調査を終えることはできたが、レンタカー等の経費が若干浮く形になった。 2014年度に予定している各種分析(外注)を充実させる。そのための謝金にあてる。
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