研究課題/領域番号 |
25370891
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
小泉 龍人 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 共同研究員 (80257237)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実験考古学 / 土器焼成技術 / 元素分析 / 鉱物組成 / 焼成温度 / 彩文顔料 |
研究実績の概要 |
7~10月、トルコ、ディヤルバクルにて、サラット・テペ遺跡(ティグリス川上流域)で出土した土器資料の整理作業を行い、土器などの分析用試料の抽出を実施した。ディヤルバクル博物館にて同分析試料の持出許可を申請したが、折しもバイラム(犠牲祭)と重なってしまい、許可を取得することが叶わなかった。整理作業未完の土器資料ならびに分析試料は同博物館に保管してもらっている。 国内では、茨城県工業技術センター(茨城県笠間市)に平成25年度に上記遺跡より持ち帰った土器試料などの分析を委託した。おもな分析成果は以下の通りである。1.これまでの元素分析の結果と同様に、彩文土器の顔料には含鉄原料以外に、土器胎土に比べて多くのカルシウムとカリウムを認められた。これは、顔料に植物灰由来のカリウムが意図的に含まれていたことを示唆している。2.土器試料の鉱物組成の分析により、①輝石類やゲーレン石の回折強度が強く約900~1000℃の比較的高温で焼成されたと推測されるグループ、②石灰石やドロマイトを含有する比較的低温で焼成されたと推測されるグループ、③両者の中間の温度で焼かれたグループの3つに分けることができた。3.とくに「ネガティヴ」文様の塗彩された土器試料の鉱物組成では輝石およびゲーレン石の強い回折線が認められた。 11月、早稲田大学本庄キャンパス(埼玉県本庄市)にて、3名の研究協力者と5名の研究補助者とともに、平面鍵穴型プランの焼成窯を改築して、築窯後に空焚きを行った。翌朝、復原土器40個体(約15kg)を窯詰めして、焼成室を日干しレンガで計7段積上げ、牛糞藁燃料743個(約24kg)と薪19束を約6時間かけて投入した。焼成室温度を900℃台で約45分以上維持することができ、ほとんどの土器が煤切れしていることを確かめた。後日、焼成した復原土器の彩文顔料が吸着していることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トルコのサラット・テペ遺跡にて発掘して日本に持ち帰った銅石器時代の土器・日干しレンガなどの試料について、茨城県工業技術センターに分析を委託した。分析の結果、前年度までの研究により提示されていた作業仮説をさらに補強する成果を得ることができ、これまでの研究の方向性に大きな間違いのない状況を再確認できた。 同時に、国内の焼成実験では、彩文の色落ちが弱いかあるいは定着した個体は合計で30点(30/40=75%)となり、前回の実験成果を上回る良好な結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年春、トルコのディヤルバクル博物館に保管してもらっている発掘資料の整理作業を行う予定であったが、昨今の西アジア・北アフリカにおける情勢悪化の影響により渡航を延期した。現地博物館に保管してもらっている貴重な土器資料はなるべく早く整理分類して、分析用の土器試料の国外持出し許可をディヤルバクル博物館から取得する必要がある。現地からの最新情報によると、ディヤルバクルにおける政治的情勢は極めて安定しており、治安上懸念材料は見当たらないということであるので、今夏に現地へ出向いて、残された作業(土器資料の整理分類および分析用試料の選別・持出し許可申請など)を速やかに実施する方策を考えている。その際、現地関係者とは密に連絡を取り合い、治安に関しては細心の注意を払いながら現地で行動する予定である。
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