研究課題/領域番号 |
25370892
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
宮下 佐江子 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 共同研究員 (80132760)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パルミラ / 饗宴図 / 彫像 / 水平把手付杯 / 格子文ガラス杯 |
研究実績の概要 |
本研究課題2年目の平成26年度は、国内のパルミラ彫像を精査した。京都大山崎美術館所蔵の世界でも珍しいシリア国以外に所在する大型饗宴図像彫刻、ブリヂストン美術館所蔵饗宴図彫刻部分などの分析をおこなった。 バチカン美術館、フィッツウイリアムス博物館ではこれまでに報告されていないパルミラの個人肖像の所在を明らかにした。 パルミラの横臥彫像に描出された容器と実際のローマ時代の実物容器の比較研究においては、水平把手付碗の実物がガラス製、金属製、施釉陶器製であることを確認した。しかし、ポンペイ壁画にガラス製、金属製の杯の描出しか見られないことから、当時の施釉陶器は高価な製品の代用品であり、パルミラの彫像に描出された杯はガラス製や金属製であると推測するにいたった。しかし、パルミラではそれらの破片は出土していない。それはこれまでに住居址の発掘調査がすすんでいないためと考えられる。ウイーン大学の調査団がおこなった住居址の調査では、小さな施釉陶器片(水平把手付杯とは特定できない)のみが出土しているが、居室の壁面ストッコ装飾には格子文様の杯の描出があり、そのような容器が当時の彼らの生活の中に存在したことがうかがえる。 これらの成果は第21回ヘレニズム~イスラーム研究会で「両把手付杯のパルミラでの受容について」として発表し、古代オリエント博物館紀要34に“La Coupe avec deux anses holrizontales à anneau et poucier Son origine et acceptation dans Palmyra” として掲載した。 パルミラ彫像の諸要素の分析を行うことは、パルミラの当時の社会状況を明らかにするための有効な手段であるので、今後とも継続して研究して行く所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
咋今の中近東の政治情勢によってレバノンへの渡航がなかなかかなわないが、ローマ、イギリスなどの博物館に所蔵されているパルミラ出土彫刻の資料情報の収集をすることが出来た。また、同時代遺物についての情報も多数得て、今後の研究に大いに貢献できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度において、これまで収集した国内外の資料の情報を整理して、パルミラの饗宴図像にみられる器の描出から地中海的文化とメソポタミアの伝統文化の関係性について明らかにしていく。また、新たに饗宴図像の履く沓についての資料収集につとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の備品の到着が遅れたため2014年度内に決済できなかった
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は購入の遅れた備品の購入にあてる。今年度は、レバノンで12月におこなわれる予定のシリア考古学者会議に合わせて、レバノンに渡航し、ベイルートアメリカン大学所蔵パルミラ彫像の調査を進める。また、サンクトペテルブルグ、エルミタージュ美術館に報告されていないパルミラ彫像の存在情報があるので、それを確認し、調査許可が得られたので調査を行う予定である。そうした資料収集と並行して、これまでの資料の情報を整理し、新しい知見を加えた論考を準備して、研究をすすめる。
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