研究実績の概要 |
当該研究の最終年度にあたる2015年は、これまでの調査研究を総括し、さらに今後の研究への道筋をつけることに務めた。 2015年7月4,5日に金沢大学で開催された「第22回ヘレニズム~イスラーム研究会」において「パルミラの沓」という演題にて発表をおこない、その成果は研究会誌「第22回ヘレニズム~イスラーム研究会」166-172頁に掲載されている。2015年10月25日~31日にはロシア共和国サンクトペテルブルグ、エルミタージュ美術館において、パルミラ出土関税表碑文、エルミタージュ所在パルミラ肖像彫刻の撮影、調査をおこなった。パルミラ関税表碑は、1881年にロシア領アルメニアの旅行家アバメレク=ラザレフがパルミラ遺跡取引場東側の附属建築物南側で発見した。それらは、ただちにロシアのサンクトペテルブルグに送られ、以来エルミタージュ美術館蔵品として門外不出となり、出土状態の写真以外は描きおこしの図しか知られていなかった。発見から100年以上を経て、碑文がどのような状態にあるか確認し、記録写真を撮影することを目的として、エルミタージュ美術館の許可を得て、目的を達成することができた。パルミラの墓内彫像も7点を確認し、写真データを得た。さらにノイン・ウラ出土の漢代錦、及び実物の沓についての調査もおこない、パルミラ彫刻に描出された沓との比較、素材についての考察を深めた。2015年11月30日~12月9日にはローマ市内博物館に於いてローマ時代の履物について精査し、さらにヴァロッコ美術館でこれまで報告されていない、パルミラ彫像4体を精査することができた。これらの成果は「パルミラ饗宴図像の容器:両把手付杯のパルミラでの受容について」(仏文) AL-RAFIDAN vol.XXXVII, 181-188頁に掲載されている。今後は、さらにこれまでに出土した饗宴図像の全数を体系的にまとめていく所存である。
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