研究課題/領域番号 |
25370894
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
大工原 豊 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20641202)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 縄文石器 / 石鏃 / 型式 / 編年 / 黒曜石蛍光X線分析 / 石器石材 |
研究概要 |
本研究の主たる目的である関東・甲信地方の押圧剥離系列の石器群の広域編年整備に関する資料調査のうち、今年度計画していた群馬県・栃木県・茨城県の資料調査を行った。特に、これまで報告書未刊行で詳細の分からなかった群馬県の早期及び後・晩期の主要な遺跡出土の石鏃についての調査を行った。石鏃に多彩な石材が用いられている群馬県は、本研究の目的である広域編年の基軸となる地域であるため、重点的に資料調査を行い、多くの特徴的な石鏃の存在を確認することができた。 この調査では、石器担当の研究協力者グループによる実測、土器担当の研究協力者による時期認定、在地石材担当の研究協力者によるプレパラート作成、黒曜石担当の研究協力者による蛍光X線分析を連携しつつ併行して行ったことにより、石鏃に関しての多くの詳細な実測図と帰属時期・石材属性についてのデータを蓄積することができた。 これらの特徴的な石鏃に対しては、技術形態学的視点から形状・技術・石材についての属性を検討し、広域編年の基本単位となる型式の認定を行った。今年度の調査成果として、早期中葉段階の「柳久保型」、後期後葉~晩期前葉の「安通型」・「押手型」、晩期前葉の「茅野型」・「谷地型」といった型式を認定することができた。 また、群馬県の前期~中期の遺跡及び栃木県・茨城県地域の遺跡については、既刊の報告書をもとに資料調査を行い、縄文時代早期~晩期にかけての各時期の主要遺跡について、時期が明確な石鏃についての実測図の収集を行った。そして、群馬県域での実地調査の成果を踏まえて、類似した明確な特徴を有する石鏃の存在の有無について確認作業を行った。その結果、両県地域においては、群馬県域で認められたような特徴的な石鏃が少なく、異なる地域性を有していることが明かとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の対象地域は北関東3県であったが、この地域における主要な遺跡出土の石鏃については、多くの資料収集を行うことができた。特に群馬県域においては、未公表であった重要な遺跡について調査を行い資料化することができたことは、大きな成果である。 そして、広域編年の基本単位となる石鏃の型式についても、当初想定していたよりも多数、型式認定することができた。本研究の主たる目的である広域編年の整備への展望が開けたと言える。 しかし、栃木県・茨城県については、文献調査のみで、実地調査を行うことができなかった。この原因は初年度ということもあり、研究の準備に手間取り、調査開始時期が遅れたことと、冬季においては北関東地方は想定外の大雪のため、実地調査が困難になってしまったことによるものである。 また、石鏃に用いられる在地石材についても、多くのプレパラートを作成することができた。従来の石材認定では肉眼観察のみの場合が多かったため、岩石学的属性を客観的に比較することができなかったが、本研究の推進により岩石学的にも比較可能なデータを蓄積することが可能となった。 黒曜石の蛍光X線分析は、時期が特定できる資料の産地を明かにすることができたので、精度の高い良質なデータを得ることができた。こうした産地情報の蓄積からどの型式の石鏃にどこの産地の黒曜石が用いられているのかといった石鏃型式の実態を明らかにすることがだきた。さらに、石鏃に用いられる黒曜石の地域ごと時期ごとの流通動態を解明する研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実地調査のできなかった栃木県・茨城県については、平成26年度に実地調査を行う予定である。また、平成26年度の調査予定である南関東地域については、当初の計画のとおり資料調査及び実地調査を行い、多くの石鏃関連資料を収集する予定である。なお、南関東地域は調査事例が非常に多いが、報告書として資料化されているものが多い。そこで、まず文献調査を重点的に行い、実見する資料を絞り込んで、効率的に実地調査を行う方針である。 また、今年度同様、南関東地域の在地石材を中心とした石器石材調査及びプレパラート作成及び、黒曜石の蛍光X線分析についても併行して行う予定である。 そして、特徴的な石鏃については型式認定を行い、時間的・空間的位置付けを明かにするために、中間的な検討会を開催して、成果と問題点の整理を行う。 また、これまでの研究成果については、学会発表を行う予定である。さらに、本研究の中間的な研究成果を公表するためのホームページを開設する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究初年度であり、準備等研究開始が遅れたためと、冬季に北関東では想定外の大雪のため、当初予定していた栃木県・茨城県への出張しての資料調査が困難になってしまったことにより、次年度使用額が生じてしまった。 また、当初予定していたアルバイトによる石鏃実測図のトレース作業についても、適した人材が見つからなかったため、次年度使用額が生じてしまった。 平成25年度に実施する予定であった栃木県・茨城県への実地調査については、平成26年度に実施するので、その際の出張旅費、研究協力者の報酬等として執行する予定である。 また、平成25年度に実施する予定であった石鏃実測図のトレース作業については、適した人材を確保する目処がたったので、まとめて平成26年度に執行する予定である。
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