本年度は本科研事業の最終年度であるので、補足調査と成果をまとめるための作業を中心に活動を行った。研究の進捗状況は、当初予定していたとおりであり、一定の成果を得ることができた。これまでの調査が不十分な石鏃について、補足調査を行いった。また、研究代表者と研究協力者が分担して研究成果をとりまとめ、最終検討会を行った。そして、その結果により一部修正を行い、最終的な研究成果報告書を作成した。報告書は印刷製本して研究者・研究機関等へ配布するとともに、ホームページにおいて公開した。 本研究においては、草創期から晩期に至るまでの石鏃型式についての研究を行った。特に早期と晩期には多くの石鏃型式を設定することができた。最終報告書において型式設定あるいはその前段階まで到達した石鏃型式は以下のとおりである。 草創期中葉の石鏃出現期の群馬地域の内湾三角形鏃、草創期中葉の長野地域を中心とする曽根型長脚鏃、早期前葉の東関東地域の堀込型、早期中葉の群馬地域の柳久保型、中期中葉の千葉地域の(仮称)東長山野型、中期末~後期前葉の東関東地域の桧の木型、晩期前葉の群馬地域の安通型・茅野型、晩期前葉の埼玉南部を中心とする後谷型、晩期中葉の西関東地域の下布田型、晩期中葉の甲信地域の御社宮司型といった型式である。 本研究により、時空的な単位である石鏃型式が設定可能であり、広域編年を整備することができることを明らかにすることができた。また、石鏃型式が土器型式と同じ分布を示す場合と、土器型式とは異なる分布を示す場合があることも明らかにすることができた。さらに、石鏃型式には威信財としての意味をもつものや、集団の象徴としての意味をもつものもあり、単なる利器としての機能・用途を超えたケースもあることも明らかにできた。以上のように、本研究により縄文研究に新たな研究ジャンルを創出することができた。
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