1.2015年度の研究実績 ①日本列島の初期須恵器研究:陶邑古窯出土の初期須恵器調査の実施。2013、2014年度に調査した理化学的分析成果は、韓国文化財保存科学会にて公開。②韓半島土器の研究:風納土城出土土器の調査を実施。その成果を論文として公表予定。③野焼きと窯焼成の接点に関する民族学的研究:ミャンマーにて調査を実施。2014年度の調査成果はEurASEAA学会で発表し、大阪大谷大学紀要論文として公開。④2015年度までの成果の報告予定(2016年度):日本考古学協会(5月)、日本文化財科学会(6月)、SEAA学会(6月)およびWAC京都大会(8月)にて公開。 2.全体の研究実績 ①日本列島の窯技術伝播:年輪年代から実年代が推定可能な宇治市街遺跡の初期須恵器を軸に、日本列島の陶邑古窯、在地の窯(時期は異なる)出土土器、伽耶の陶質土器について、理化学的分析と考古学的調査を実施し比較した。その結果、宇治市街遺跡出土の初期須恵器および韓半島系軟質土器は在地で製作された可能性の高いことがわかった。白石らは、河内湖周辺の初期須恵器が、陶邑、吹田古窯群から多く供給されたと指摘した(白石・田中2016)が、小規模な初期窯の製品の流通範囲は狭く必要に応じて生産消費されるという見通しを持った。②韓半島南部の窯導入と展開:百済になると、外来の影響を間接的に受け土器組成が変化し、生産も大きく変わった可能性が高い。その要となったのは回転台の普及であると指摘した。窯焼成の起源については、韓国の協力者が2016年度に考察結果をまとめる予定である。③中国東北部土器の検討:遼寧省普蘭店市貔子窩出土の戦国時代と前漢期の土器の理化学的分析を実施し、還元焔焼成でも1000℃を大きく超える温度で焼成されたとは考えにくく、瓦質土器や楽浪土器に近い焼成技術であることがわかった。
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