研究課題
基盤研究(C)
初年度にあたる平成25年度は、8月から9月にかけて、トルコ南東部バトマン県のハッサンケイフ・ホユック遺跡の発掘調査(筑波大学アナトリア調査団:代表三宅裕筑波大学教授)に参加し、本研究で用いる一次資料となるフリント製および黒曜石製の石器資料を獲得した。これらの資料を用いて、石器製作技術および石器のスタイルに見られるパターンを分析し、基礎データの収集に努めた。また、本研究における、石材産地の同定、石器使用痕分析、石器の加熱処理実験の3つの柱の1つである石材産地分析において、主要石材の1つである黒曜石の交易を探るため、同遺跡および近隣のサラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡出土黒曜石の理化学分析をおこなった。研究協力者であるカナダ・マクマスター大学のトリスタン・カーター准教授との共同で、エネルギー分散型蛍光X 線分析法を用いて約800 点の黒曜石の成分組成分析を実施し、東アナトリア産の黒曜石が中心的に利用されていたことが明らかになった。さらに、加熱処理実験に関して、実験用の資料を獲得するべく、ハッサンケイフ・ホユック遺跡周辺でフリント産地の調査を実施した。ティグリス河沿い、その支流のワディ沿いを踏査し、フリントのノジュールおよび転礫を複数の地点から採取した。加熱実験として、採取したフリントを熾火で30分から1時間加熱し、石質の変化を観察する実験をおこなった。これは本格的な温度管理を伴う本実験に入る前の予備実験として実施したものであるが、加熱処理に必要な温度、加熱時間についての予見を得ることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
石器の基礎分析の3つの柱としている、1)石材産地の同定、2)石器使用痕分析、3)石器の加熱処理実験のうち、1)の調査として黒曜石産地同定分析結果を予定通り得ることができた。また、遺跡周辺でのフリント産地の踏査を実施し、石灰岩盤中にフリントのノジュールを産出する地点を確認することができた。これらは25年度の研究実施計画として予定していた研究が順調に進んだ結果である。さらに次年度に予定している3)の加熱処理実験についても、今年度に予定を早めて予備実験をおこない、本実験への準備を進めることができた。
次年度は、計画研究通り石器の加熱処理実験を進める。すでに実験に用いるフリント石材は確保しており、実験用のオーブンおよび高温計を準備でき次第、本格的な実験に入る予定である。また、引き続きフィールドでの調査を実施し、加熱処理の施された石器標本を獲得するとともに、実験結果との対照をおこなう。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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