本研究の目的は、古代における本州東北地方北部から北海道への文化集団の移動を明らかにすることにある。実施計画は、第一に「比較考古学的手法」により、日本列島北部地域の末期古墳と周辺集落の住居址について、その構造(特性)、出土遺物の比較検討を行う。第二に北海道の末期古墳および周辺集落の住居址と、続縄文文化あるいはオホーツク文化の墳墓・住居址について、その構造(特性)、出土遺物の比較検討を実施する。第三に「文献史学的手法」により文化集団の移動に関連する記述からの比較検討を行うものである。これらの計画により、研究目的に沿って平成25~28年度の期間に次のとおり調査・研究を実施した。 Ⅰ比較考古学的調査 (1)北海道中央部(最終年度は恵庭市、千歳市)を中心に末期古墳と周辺集落の立地環境、出土遺物の調査・データ集積を実施した。(2)北海道中央部(最終年度は恵庭市、千歳市、苫小牧市)、北海道東部(最終年度は北方四島の択捉島・国後島)を中心に続縄文文化の墳墓と周辺集落の立地環境、出土遺物の調査・データ集積を実施した。(3)北海道東部(最終年度は北方四島の択捉島・国後島)を中心にオホーツク文化の墳墓と周辺集落の立地環境、出土遺物の調査・データ集積を実施した。(4)青森県、岩手県(最終年度は宮古市、山田町)を中心に東北地方北部の末期古墳と周辺集落の立地環境、出土遺物の調査・データ集積を実施した。 Ⅱ文献史学的調査 (1)刊行史料を中心に古代の文化集団の移動に関連する記述等の集成作業を実施した。(2)青森県、岩手県、静岡県、愛知県、京都府、神奈川県、最終年度は奈良県(橿原市、明日香村)、岡山県(岡山市)、広島県(福山市)を中心に古代の文化集団の移動に関連する木簡、墨書・刻書土器など文字資料の調査を実施した。また、最終年度には、日本考古学協会大会(青森県弘前市)において本研究の成果を報告した。
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