研究課題/領域番号 |
25370906
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館 |
研究代表者 |
志賀 智史 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 主任研究員 (90416561)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 赤色顔料 / 朱 / ベンガラ / 石棺 / 甕棺 |
研究概要 |
本研究は、古墳時代の石棺に塗布された赤色顔料について、赤色顔料を形態や組成から分類を行い、どのような赤色顔料が使用されているかを明らかにする。さらにその塗布範囲(石棺内面か外面か、局所的か等)についても分類を行い、棺を赤く塗る風習の成立や展開について検討を行うものである。当該期の赤色顔料は遺骸頭部や副葬品に使用されていることも多いので、石棺への塗布の認定については目視と実体顕微鏡観察を十分行ない判断した。 今年度は、その風習の出現地の一つと考えられている九州地方で調査を行った。本年度、大分県日田市との受託研究として行った吹上遺跡6次調査出土の4・5号甕棺墓で、甕棺内面に赤色顔料が塗布されていることを明らかにした。本科研費で北部九州の甕棺墓を精査したところ、吹上例と同時期の弥生時代中期後半の甕棺墓に同様な事例が一定量認められた。赤色顔料は一般的に朱とベンガラの2種類が知られているが、今回調査を行った甕棺墓では全て朱のみであった。弥生時代中期後半以降の墓制として箱式石棺墓がよく知られているが、これは棺内面にベンガラを塗布するという特徴がある。甕棺墓と箱式石棺墓という墓制の違いによって内面に塗布された赤色顔料が異なっている点は大変興味深い調査結果である。 古墳時代の石棺では、内面にベンガラを使用するものだけが認められた。筆者による過去の調査で、内面に朱を塗布した事例は1例のみであったため、九州地方の石棺にはベンガラが塗布されることが特徴であったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
棺を赤く塗る風習は、これまで弥生時代中期後半の箱式石棺墓と考えられていたが、同時期の甕棺墓でも確認することができた。各墳墓で使用された赤色顔料は、箱式石棺墓では内面にベンガラ、甕棺墓では内面に朱というように、墓制によって異なっていたことを明らかにすることができた。これらの成果は、本研究で初めて指摘することができた知見であり、今後、古墳時代への展開を考えるにあたって大変重要な成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、中四国地方を中心に調査を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は九州地方での調査が中心であったため、調査旅費が小額で済んだ。 次年度は、中四国での調査が主となるため、その旅費として充当したい。
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