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本研究では、弥生時代～古墳時代の墳墓の埋葬施設（室、槨、棺）への赤色顔料の塗布について、その種類や塗布範囲の調査を行い、時期差や地域差、階層差等の有無を検討することを目的とする。これまで墳墓から出土する赤色顔料の使用方法については、塗布や散布、敷かれたなどと言われることがあるが、使用対象が木棺や遺骸といった有機物であることが多く、実際にはその使用方法は明確ではない。ここでは、石棺や甕棺などの腐朽しない棺を主な調査対象とし、これらの点について検討を行うものである。丹塗土器や埴輪、木棺の赤色顔料などの関連資料についても積極的に調査を行い、腐朽しない棺での調査結果をより多角的に検討する上での参考資料とした。
今年度の特記すべき調査としては、発掘調査後に部材の一部が埋め戻される予定の玉丘古墳（兵庫県加西市）の長持形石棺の調査を行なうことができたことが挙げられる。大王墓にともなう長持形石棺は、現地に埋め戻されているものが多く、調査可能なものは大変少ない。今回の調査は大変貴重な機会となった。また、関連調査として実施していた城の山古墳（新潟県胎内市）の報告書をまとめ、東日本の前期古墳での赤色顔料の種類や使われ方等を初めて明らかにすることができた。
事業全体の成果としては、石棺内面全面に赤色顔料を塗布する地域、部分的にしか塗布しない地域（蓋の合わせ面のみ塗布、蓋内面のみ塗布、蓋内面以外の内外面全面塗布など）が認められたことにより、塗布範囲に地域性があることが明らかになった。この地域性には年代差だけでなく、石棺材や石棺形態との関連性も認められた。石棺に塗布された赤色顔料については、地域や編年、塗布範囲等との相関関係があることが明らかになった。
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