１９世紀におけるフロンティアの地域像に関する日露比較研究

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25370921
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 法政大学
• 研究代表者: 米家 志乃布 法政大学, 文学部, 教授 (30272735)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: ロシア帝国 / シベリア / 極東 / 地理学協会 / 日本 / 蝦夷地 / 古地図 / 探検

研究概要

本研究では，19世紀におけるロシア帝国と近世日本のフロンティアはどのように地図上に描かれていたのか，両国の地図作製にかかわる国家の学術機関において作成された地図類を利用して，各地域像の共通性や異質性について明らかにすることを目的としている。
本年度（平成25年度）は，研究遂行のための基礎的作業として，ロシア地理学協会が編纂した資料や探検記などの所在調査を行い，特に19世紀半ばのアムール川沿岸調査に関しての探検調査結果として19世紀に発行された資料集・地図類の複製版を購入した。ロシア地理学協会の活動についての文献については，特にソ連時代に編纂されたものを複写した。また，ロシア科学アカデミー地理学研究所が主体となって編纂されたクリル諸島のアトラスを購入し，アトラスに掲載されている地図の特徴について確認した。
また，平成25年9月前半に，サンクトペテルブルクにあるロシア地理学協会本部に赴き，協会内の文書館でアーキビストから文書類の詳細な説明をうけ，協会員が主催した19世紀の重要な探検にかかわる古文書を閲覧した。また印刷されていない手書きの文書目録も確認し，協会本部には探検時の地図類そのものはほとんど存在しないことが確認できた。そこで，サンクトペテルブルクのロシア国立図書館地図部に赴き，地図目録を確認し，極東への探検にかかわる地図類を閲覧した。日本に帰国してからは，ロシアの主要な古地図集のCDを購入し，いくつかの地図について確認を行った。
本年度は，研究遂行にかかわる基礎作業が中心となり，研究成果をまとめて論文として発表するには至らなかったものの，主要な文献や資料類の所在が明らかになり，必要なものが購入できたことは成果であった。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現段階で，ロシアで収集した文献の記述内容の把握や日本で購入した資料集の分析はまだ十分に行っていない。サンクトペテルブルクにおけるロシア地理学協会における調査や文献による記述などから，19世紀後半におけるロシア地理学協会の探検は，シベリア・極東よりもむしろ中央アジアにおいて顕著であり，シベリア・極東の地図作製を考えるうえで，中央アジアの地図作製も含めて考えなければならないと考え始めた。研究遂行の方向性について変更を考えている。中央アジア方面に関する文献収集はまだ何も行っていない。

今後の研究の推進方策

引き続き，ロシア地理学協会のシベリア・極東の地図作製にかかわる文献を読み，詳細をまとめる。また，ロシア地理学協会の19世紀における活動をシベリア・極東のみに注目するのではなく，全体像のなかから位置づけるように資料調査や文献調査収集を行うことを，次年度以降の課題とする。そのためには，19世紀において協会の探検家が活発に活動を行った中央アジアの探検と地図作製について，文献や資料を収集していきたい。

次年度の研究費の使用計画

前年度（平成25年度）に予定していた北海道大学スラブ研究センター図書館での文献収集は，法政大学図書館の相互貸借システムを利用して，直接に北海道大学から数点の文献を取り寄せ，法政大学において複写を行ったため，出張する必要がなくなった。そのため，出張費が当初の予定より少なくなり，若干の残額がでたことが理由である。
次年度使用額は，海外出張旅費に組み込む予定である。