研究課題/領域番号 |
25370921
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
米家 志乃布 法政大学, 文学部, 教授 (30272735)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本 / 蝦夷地 / 古地図 / ロシア極東 / シベリア / ロシア帝国 / 江戸幕府 / 節用集 |
研究実績の概要 |
本研究では、19世紀における近世日本とロシア帝国のフロンティアが地図上にどのように地域像として表現されているのか、両国の地図作製とその表現の特徴について明らかにすることを目的としている。 本年度(平成27年度)は、近世日本の異国・異域である「蝦夷地」像を把握するために、江戸幕府および民間の刊行図や節用集付図に注目し、分析を行った。まず、江戸幕府は17世紀以降、蝦夷(現在のアイヌ民族)の住む「蝦夷地」を異国として認識し、松前藩に支配させていた。しかし、19世紀になってから、その彼方にある異国(具体的にはロシア帝国)の存在を脅威とし、直接に支配するようになる。その結果、伊能図に表現される「正しい」地図の作製につながった。一方、民間の刊行図や節用集の付図などには、江戸幕府の作製するような最新の「蝦夷地」像は見ることはできず、近世を通して、旧態依然とした蝦夷地像が描かれていた。本分析の結果、為政者・知識人層の蝦夷地像と庶民の蝦夷地像の差異が明らかになった。研究成果は、「近世日本図の北辺・『蝦夷地』表象」(『文学』16-7)と「近世日本における庶民の『蝦夷地』像‐刊行図と節用集所載の地図を中心として‐」(『法政大学文学部紀要』72)と2編の論文として発表した。 引き続き本研究では、本年度に行った近世日本の蝦夷地像の議論を踏まえ、ロシアとヨーロッパで作成された古地図類から見た「蝦夷地」像を明らかにし、その両者の比較研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に行った近世日本図の分析を十分に踏まえて、さらに近世日本の蝦夷地像について江戸幕府と民間の両方について論文として発表し、一定の研究成果をあげた。これにより、ロシア帝国の地図作製状況と比較検討する準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、本研究の最終年度である。昨年度までに行ったロシア帝国のシベリア・極東・中央アジアに関する地図作製の資料調査を踏まえて、ロシアによるフロンティアの地域像の全体について分析する。その際、近世日本の蝦夷地像をロシア・ヨーロッパの古地図に描かれた地域像とも比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、すでに収集した地図類や史料をもとに分析を行い、論文発表を中心に作業を行った。それゆえロシアや日本国内での新たな史資料の調査に関する出張旅費の支出がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、ロシア・モスクワでの古地図の閲覧と文献の収集を行うため、海外出張旅費として使用する予定である。
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