本研究では、19 世紀における江戸幕府・ロシア科学アカデミー・ロシア地理学協会などの日本とロシアの国家学術機関が作製した地図類に描かれた「蝦夷地」の地域像を検討することを目的とした。日本で作製された日本図や蝦夷図に描かれた「蝦夷地」像は、江戸幕府天文方が主導した伊能忠敬による測量図(伊能・間宮図)および松浦武四郎による蝦夷図が完成形である。一方、ロシアでの「蝦夷地」像は、帝国アトラスなどの国家機関の地図においても旧態以前とした不正確なものだったことが明らかになった。また、日本の民間における「出版図」を見ても、必ずしも最新の地理情報は繁栄しておらず旧態依然とした蝦夷地のかたちが描かれていた。
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