研究成果にあるように郊外地域について、2つの研究業績を得ることができた。その1は、郊外地域には住宅を購入して移り住んできた住民と、改革前の生産大隊を引き継いだ事業体の社員となった地付き村民と、さらに永住権を取得した元農民工の3者は、異質要素として互いに混じり合わないモザイク構造が出現していることが明らかとなった。 地付き住民と永住者の両者は、自己形成、学歴取得、就職、生得的家族から獲得的家族へ、子育て、老後といったライフコースにおけるそれぞれの分岐点で時期的なズレを抱えながらも重なる部分がある。 同じ空間に造成された分譲住宅団地は、一種のgated communityとしての性格を持つ。ゲートで外から閉ざすことで、住民は、自分たちだけの安寧な生活を楽しむことが出来る。そして、住宅の資産価値は保全され、周囲の住宅以上に価格が高騰することが、分譲住宅団地に住む人々の共通の関心事となっている。 その2は、郊外地域における混住の状況、借家人であるニューカマーとの関係、立ち退き後の生活の変化、自我認識の変化などを把握するため、2008年11月、09年3月、09年8月、10年・11年・12年・13年・14年5月に地付き農民に対しアンケート調査を実施した。 2008から2014年までを通して、回答者の生活は社会・経済の発展に伴い、著しく改善し、生活の質も大きく向上していた。一方、農村集落時代から引きずってきた基本的な生活姿勢、習慣、交友・交際圏、また貯蓄などの生活防衛、倹約精神などに象徴される農民に通底する根源的な習性に大きな変化が起きていない。特に世帯主世代は、後継者世代と比べると、親戚との付き合いに限定するように、時代の変化には慎重且つ保守的な態度で対応している。
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