本研究の目的は、日本における外国人マネジャーの役割についての理解を深めることにある。特に中国人と米国人に焦点を当て、経営地理学的視点からマネジャー個人の文化変容、立地選好、ネットワーキングという3側面の特徴から検討するため、当初の計画通りアンケートおよびインタビューを実施した。 これまでの調査分析結果より、米国人マネジャーは文化変容の特徴から4タイプに分類されていたのに加え、15年度の追加調査分析から、さらにRestarterとMaverickを合わせた6タイプに分類できた。また、本研究において「スキーマ」とはビジネスおよび一般的環境についての認知的な立地に関する知識であり、状況を理解する精神的アルゴリズム、つまり文化を解釈する認知的空間だと考える。特に交渉やマネジメントの場でスキーマをうまく適応あるいは操作できるマネジャーたちが企業の成功に貢献していることが分かった。 一方、中国人マネジャーは、経営方式の特徴から4タイプに分類できた。さらに15年度は空間的側面から行動を分析することを試みた結果、ビジネスの集積する東京・大阪への選好、ラーニングネットワーク内での関係構築が明らかに見られた。また、アジアにおける華僑ビジネスはGuanxiを利用した政府関係者とのアクセス等のおかげで強力な力を持っている様子が見られるが、日本における中国人マネジャーの行動は明らかにそれとは異なり、彼らのGuanxiには日本人も含まれ、パワーよりも柔軟性や友好関係を利用して、ビジネスの成功につなげている。 本研究の重要な結果として、留学生を筆頭に異文化能力を持つ外国人を今後もっと戦略的に生かすべきだという課題が見えた。具体的には、受入国である日本側として、ラーニングネットワークの場を提供し、日本人と外国人のビジネスの接点にある関係を育てること、特に若いITタレントの多文化的な協同プロジェクトや協働スペースを提供することが有効と考えられる。
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