研究課題/領域番号 |
25370928
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
土平 博 奈良大学, 文学部, 教授 (70278878)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近世陣屋 / 陣屋町 / 類型化 / 藩領 / 地割 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、旧出羽国(主として現山形県内)・越後国の諸藩ならびに幕府直轄領の変遷について注目しながら、陣屋の設置、移管、廃止の経緯を整理した。山形県の北部は山形藩領と隣接する諸藩領ならびに幕府直轄領、さらに他国に拠点をもつ藩の飛地領が錯綜する地域であり、陣屋が各領域に置かれ、在地を管轄する役所としての機能を果たしていた。その陣屋は、既存の街道集落や農村集落に付帯するように新設される例が多かった。陣屋の敷地は交通路(道路、河川)を意識した場所に求められ、集落と一体化した小規模な城下町、つまり陣屋町の体裁が整えられた事例もみられた。過去の研究において、事例としてとりあげた美作国とよく似た傾向をもつ地域である。陣屋と一体化した集落が小領域の中心となっており、現山形県北部はそのような小領域が集中する地域とみなすことができよう。 陣屋の規模や形態を知る手がかりとなる絵図の残存状況は良好とはいえない。しかし、限られた絵図を手がかりに現地調査をおこなった結果、おおむねその規模や形態を推測するに至った事例もあり、一定の成果を得た。 個々の陣屋・集落形態を検討していくと、陸奥国や出羽国においては、畿内やその周辺における陣屋・集落形態(つまり、「陣屋町)」)とは異なる点が見出せる。過去の研究において「城下町」に対する「陣屋町」として使用されてきた用語の問題、また、一括りに「陣屋」・「陣屋町」で済ますことができない形態上の分類について再検討を要することがしだいに明らかとなってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
陸奥国および出羽国における陣屋の位置を示した分布図はおおむね作成することができ、分布の特徴をとらえることができるようになった。また、藩領や幕府直轄領の錯綜状態も理解できるようになった。陸奥国と出羽国の小藩や幕府領に置かれた陣屋ならびに大藩である仙台藩の要害・所・在所、秋田藩や盛岡藩の舘は、小領域の拠点として機能を果たしているが、形態上、両者は異なる点がみられる。 これらを比較検討するためには必要な同じ精度の復原図を作成する必要があるが、資料の制約上、当初計画よりも作業が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの収集した史料ならび現地調査に基づいて陣屋復原図ならびに陣屋町復原図を継続して作成していく。史料上の制約をふまえ、今後は明治期の地籍資料を基にして地割の復原を通じて、陣屋ならびに集落の位置関係を精緻にとらえ、集落構造を分析していく 予定である、 さらに、事例をふやすために、対象地域を上野・下野・信濃・駿河・三河・美濃・越前・飛騨などにも広げる。4年間の継続した研究のなかで、東日本地域で収集した事例を基にして陣屋ならびに陣屋町の類型化をめざしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査対象地域のうち未調査に終わった地域が生じたために旅費の残額が発生した。また、資料収集ならびに図面作成のための人件費等の支出ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
未調査に終わった地域の現地調査をすすめるとともに、調査対象範囲を拡大する予定である。陣屋復原図ならびに陣屋町復原図の作成にむけて、主にトレース作業のための人件費を支出する予定である。
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